というわけで、こんな仮説をたててみた。

<なでしこジャパンはプレッシャーに強い>
<プレッシャーに強いなでしこジャパンにはプレッシャー世代が72%を占めている>
<つまり、プレッシャー世代はプレッシャーに強い>

ん?

賢明なる読者ではなく、書いてる自分自身が違和感を感じてしまった。説得力がない。三段論法の肝心のみっつ目が飛躍しすぎている。

ならば、専門家に聞いてみよう! というわけで、なでしこジャパンが、世間の注目を集める遥か以前から彼女たちを取材し続けている、日々野真理さんに上記の仮説をぶつけてみた。日々野さん、そこんとこ、どうなんでしょう?

「おもしろい視点ですね(笑)。ただ、なでしこに限らず世界各国の代表チームの構成をみても、『プレッシャー世代』とされる世代が中心選手ですから……ねぇ(苦笑)。ただ、世代論はさておき、たしかに彼女たちはふつうならプレッシャーでつぶれてしまうような大舞台ほど、力を発揮するタイプだと言うのは間違いありません。その理由は、女子サッカーが世間から注目されなかったこれまでの歴史が大きいように感じます。たとえば、数年前。いまと変わらぬ全力プレーを彼女たちが繰り返しても、世間もマスコミも観客の数も、悲しいぐらいに少なかった。ところが、昨年のワールドカップでは世界中の人々が彼女たちに注目してくれた。開催国ドイツとのアウェイ極まりない状況でさえ、彼女たちは心地良かったようです。それが、たとえブーイングであろうが、注目を浴びるということ。自分たちのプレイを観てもらえているという確かな実感。そんな“大舞台に立てた”ことが嬉しくて楽しくて仕方なく感じる、といったようにプラスイメージにつなげているのでしょう」

写真 早草紀子   拡大画像表示

勝負を楽しむ。
いつの頃からか、国を代表するアスリートが好んで使うようになった言葉だ。
だが、バブルの恩恵にあずかれなかったせいで、多分に性格がひねくれてしまった僕は、この手の言葉を安易に口にする人物に共感を覚えない。楽しんでる場合かと。あなたが背負っている「日本代表」というのはそんなに軽いものなのかと。楽しむという言葉を口にするぐらいなら、プレッシャーでガチガチになり、なにを言ってるかわからないぐらいの選手のほうが応援したくなる。

だが、女子ワールドカップの時のなでしこジャパンだけは別だった。
サッカー好きでなくとも、王者アメリカとのPK戦の映像を(彼女たちが世界一に輝いた瞬間を!)、何度もテレビで目にしたはずだ。格下相手に「絶対負けられない」とプレッシャーを感じまくったアメリカチームとは対照的に、なでしこの面々は、みな一様に笑顔さえ浮かべていた。彼女たちは、大舞台だからこそ楽しむべきだということを言葉ではなく体現し、なおかつ、結果に結びつけていたのが感動的だった。