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漫画『喰いしん坊!』は、日本文芸社の「週刊漫画ゴラク」に連載されていた土山しげる氏の作品だ。タイトルで分かるように食べ物を扱った漫画だが、よくあるグルメ漫画や料理漫画のように、料理や素材に対するウンチクを語ったり、料理対決で雌雄を決したりするものではない。主人公はサラリーマンの大原満太郎。彼が大食いの素晴らしさに目覚めて、多くの大食いライバル達と戦っていく様子を描いている。 

食べることの大好きな満太郎が偶然出会ったのは、“ハンター錠二”の異名を持つ“食闘士(フードファイター)”で、満太郎は彼に敗北すると共に、大食いの世界に足を踏み入れることとなる。そこに出てくるのが丹下フードファイター(TFF)。これは「大食いのスポーツ化」を目指す富豪、丹下考之助が設立したもので、ハンター錠二を始めとした多くのフードファイターが、TFFに所属し、日々食べることに精進している。サラリーマンを辞めた満太郎もTFFに所属するかと思われたのだけれども、思うところもあり一匹狼を貫いて、独自の修業の旅へと出かけていく。

この漫画で非難されているのが“邪道喰い(じゃどうぐい)” と呼ばれる食べ方だ。字面だけ見ると、よほどのひどい食べ方に思うかもしれないが、要は普通の食べ方とは大きく異なり、見ている者に不快感を与えるような食べ方を指している。

・(肉まんを皮と具に分けるように)バラバラにほぐして食べる
・熱い食べ物を水や氷で冷やす
・お茶や水を注いで一気にかき込む
・押し潰したりおにぎりのように丸めたりして食べる
・ミキサーなどで粉々にして食べる。液体状にして飲む

確かにどれも行儀の悪い食べ方だ。例えばカツ丼をミキサーにかけたところを想像して欲しい。食べる本人はそれで満足であって、見ている側からすれば、気持ちが悪くなっても仕方ないだろう。ゴルフの基本的な考えに、“あるがままに打つ”とされるのがある。これを踏まえて表現するのなら、“あるがままに食べる”のが理想になりそうだ。この邪道喰い徹底してを嫌っているのが、主人公の満太郎。当初は邪道喰いに対して心を揺さぶられる場面もあったが、修羅場をくぐるごとに大食いの技術と共に精神も鍛えられたようで、正道喰い(せいどうぐい)を貫いて大食い勝負に挑んでいる。