ただ正道喰いと邪道喰いに確たる差があるかと言えば、グレーゾーンもあるように思う。例えば串に刺さった熱々のおでんがテーマになった時、邪道喰いは氷水に浸して、おでんを冷ましている。確かに温かいおでんの良さを台無しにしているので、邪道喰いと表現するのはわかる。では満太郎はどのようにおでんを食べたのかと言えば、包丁などを使って細かく切り、箸を使って食べていた。『良いのかなぁ』と思わされるところだ。仮にみじん切りにして丼に入れ、スプーンでかき込んでいたらどうなるだろうか。何となくだが邪道喰いと呼ばれるような気がする。つまり包丁で細かくするのは、ギリギリ正道喰いの範ちゅうなのだろう。

また揚げたてのコロッケが出た時に満太郎はどうしたか。用意していたキッチンペーパー(フードファイターなら、このくらいは用意している)でコロッケを挟むと、せんべいのようにペッタンコにしてしまう。こうすることで余分な油分が抜け、コロッケも程よく冷めるとされている。…………でもやっぱり、これも邪道喰いではないのかなと。同じことを子供がやれば、お母さんに「食べ物で遊んじゃいけません!」って怒られそうだ。

ただ好意的に判断すれば、“見ている人が不快に思うかどうか”が大切なのだと推測される。例えばトマトの大食い勝負の時に、トマトを揉みほぐしてすする食べ方をするフードファイターが登場した。これは創意工夫があると認められたのだが、勝負が進むにつれてトマトの汁が溢れ、テーブルが汚れてくると、主催者の心象を害し失格となってしまう。先に書いたおでん勝負でも、おでんを氷水につけたのを見た観客は、あまり良い顔をしていないのだが、満太郎が細かく切って箸で食べているシーンでは、観客は『なるほどなぁ』と観戦している。勝負を判定する審判や、見ている観客を引きつけるのも勝負の内なのだろう。

修業の旅に出た満太郎は、TFFと大阪食い倒れフードファイター(OKFF)が共催する「喰いワングランプリ」に出場。並み居る強豪と戦いながら、決勝に進出する4名の中に入る。もちろんそこにはかつて満太郎が破れたハンター錠二もいれば、邪道喰いをするOKFFの参加者もいる。誰が勝ってもおかしくない勝負なのだが、その結果は……書くのは止めておこう。ぜひ漫画を読んでもらいたい。その後、満太郎は世界のフードファイターが参加する「喰輪杯(クイリンピック)」にも出場。日本が終われば、世界に舞台を移すのは漫画の常道。もちろんここでもスケールの大きなフードファイター達が待ち構えている。満太郎の食いっぷりと合わせて、大会の結果もぜひ漫画で読んで欲しい。