STAGE GATE VR シアター vol.1 『Defiled-ディファイルド-』(リーディングスタイル) カメラマン:岡千里

“ニューノーマル”を具現化する観劇スタイルの確立を目指し、劇場公演とVR配信の2形態で行われる「STAGE GATE VRシアター」シリーズ。7月1日に開幕したその第1弾『Defiled-ディファイルド-』において、今回は加藤和樹・松岡充による上演の様子をレポートする。

立てこもり犯とベテラン刑事の緊迫感あるやり取りが、リーディング形式で繰り広げられる本作。2017年版を手がけた鈴木勝秀が引き続き演出を担当する。キャストは他に猪塚健太、伊礼彼方、上口耕平、岸祐二、小西遼生、章平、鈴木壮麻、成河、千葉哲也、中村まこと、羽場裕一、東啓介、前山剛久、三浦宏規、水田航生、宮崎秋人、矢田悠祐も名を連ね、2人1組が回替わりで出演する。

会場となる東京・DDD AOYAMA CROSS THEATERでは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策を徹底。入場時の体温測定を経て、前後左右に間隔をあけ通常の30%以下に数を押さえた客席に約50人が着席した。ステージ左右と客席正面に設置されているのは3台の球体カメラ。収録されたVR映像は、劇場公演の数日後に動画配信サービス・Blinkyから視聴できる。

取材日は、犯人ハリー・メンデルソンを加藤、刑事ブライアン・ディッキーを松岡が演じた。目録カードに代わってコンピューターの検索システムが導入されることに反対する図書館員のハリーは、建物の爆破を予告して立てこもる。交渉にやって来たブライアンは、巧みな話術でハリーの胸襟を開こうとするが……。

テクノロジー偏重の社会に強烈な問いを投げかけるハリー。理性と狂気を持ち合わせた犯人のキャラクターを、加藤は緩急あふれる骨太な演技で立ち上げる。対する松岡は、座る体勢や向きを頻繁に変える、ハリーの独白中に台本から顔を上げて表情をつくるなど、セリフに起こされない“オフ芝居”で人情味あふれるブライアン像を造形した。緊迫した心理戦から2人に芽生える関係性に注目したい。

上演時間は約70分(休憩なし)。東京公演は8月2日(日)まで。その後、大阪公演が8日(土)~10日(月・祝)に行われる。キャストの出演スケジュールとVR映像の配信日程は、チケットぴあの販売ページで確認を。なおVR映像はヘッドマウントディスプレイや専用ゴーグルがない場合でも、「2Dモード」に設定することでスマートフォンやタブレットで楽しめる。お目当てのペアや複数のキャスト組み合わせで、新しい観劇スタイルを体験してみては。

取材・文:岡山朋代

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