地上最強を目指して何が悪い!!
 人として生まれ男として生まれたからには誰だって一度は地上最強を志すッ
 地上最強など一瞬たりとも夢見たことがないッッ
 そんな男は一人としてこの世に存在しないッッ!!

1991年から週刊少年チャンピオンで連載がはじまり、『修羅の門』『高校鉄拳伝タフ』とともに格闘漫画ブームの礎を築いた『グラップラー刃牙』(作者:板垣恵介)。タイトル変更2回、連載期間20年以上、外伝・スピンオフ多数、累計単行本数100巻オーバーという超ロングセラー作品が、あと3話で最終回を迎えることを皆さんはご存じだろうか。

この完結タイミングに合わせ、これまでの『刃牙』の歩みと魅力について、20年来のファンが独断と偏見もまじえつつ総ざらいさせていただきたい。

■『刃牙』ってどんな漫画?

第1シリーズ『グラップラー刃牙』、第2シリーズ『バキ』、最終シリーズ『範馬刃牙』、すべてに一貫するテーマは2つある。

【テーマ1】偉大な最強の父親と、その背中を追う息子の物語
【テーマ2】あの格闘技とあの格闘技、もし戦ったらどちらが強い?

 

主人公の範馬刃牙は「地上最強の生物」「鬼(オーガ)」と讃えられる範馬勇次郎の息子として生まれた。父親は人類最高の格闘能力を誇り、肉体ひとつでアメリカ大統領をも屈服させるという凄まじい男である。その偉大すぎる父・勇次郎に母親を文字どおり“奪われた”刃牙は、彼よりも強くなるためにあらゆる強者を求め、地獄の試練に身を投じていく。これが『刃牙』シリーズの基本ストーリーだ。

はじめは勇次郎を憎むだけだった刃牙だが、何度もぶつかっては跳ね返され、言葉よりも拳で親子の会話をかわし、強敵たちと戦って成長していくうちに「憎悪」を超えた感情を抱くようになる。また、強い者を見ると衝動的に殺傷してしまう勇次郎も、息子の刃牙にだけは態度が異なる。会うたびにボコボコにしつつも、時には悩める刃牙にアドバイスしたり、親らしく(?)しつけを施すなど複雑な感情が見え隠れする。料理と格闘、ジャンルこそ違えど『美味しんぼ』によく似た親子関係とも言えるだろう。

やがて父親と見合うレベルまで成長した刃牙は、憎しみでなく純粋な闘志で勇次郎に“最後の戦い”を挑む。現在まさにチャンピオン本誌ではその激戦のクライマックスを迎えているところだ。