木津つばさ 撮影:源賀津己

木津つばさが、成井豊の脚本・演出で舞台化される『かがみの孤城』に出演する。稽古前の6月下旬、作品の魅力や役どころを尋ねていると、飛び出してきたのはとある人物との意外な接点だった。

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辻村深月が2017年に刊行し、翌年の本屋大賞を獲得した本作。同級生の悪意に傷つき、家に閉じこもる中学1年生の主人公・こころ(生駒里奈)はある日、自室の鏡を通じて見知らぬ城がそびえ立つ異世界へ引き込まれてしまう。そこで出会った6人の仲間と望みが何でも叶う“願いの鍵”を見つけようと奔走するうちに、彼らは自分たちが城に集められた理由を目の当たりにして──。

台本を読み、いじめを起点とした作品の感想を「SNSでの誹謗中傷に注目が集まる今だからこそ“刺さる”物語だと思いました」と語る木津。ネタバレにも踏み込みつつ「学校へ行けない悩みは時代を超えて一緒だし、“あなただけじゃない”と背中を押してもらえるはず」「最後には “学校へ行ってきます”って気持ちになれるのでは」と作品の魅力を述べる。

木津は、こころと同じく城に集められた不登校の中学2年生・マサムネ役を演じる。自身は「普通に学校へ通う、等身大の中学生だった」と振り返るだけあって、大のゲーム好きであること以外、マサムネとの共通点はない。しかし「自分と遠いからこそ想像力を働かせ、感じるままに演じてみたい」「役と一心同体になる普段のアプローチとは異なる、新たな挑戦です」と意気込んでみせた。

集められた7人にとって、孤城は次第に大切な“居場所”となっていく。ではかつて中学生だった木津の、心の拠りどころになる“孤城”は何だったのか。答えは、間髪入れることなく「ムロツヨシさん」──。DVDで観た映画『サマータイムマシン・ブルース』におけるムロのたたずまいに惹かれ、彼が当時出ていたラジオへメール投稿するように。ある日、怪我でサッカー選手になる夢を諦め「人生どうでもいい」と送った内容が番組内で紹介されると、ムロから「役者なら誰にでもなれる」という言葉が。それで現在の道に進んだ──という原体験を明かした。

公演は、8月28日(金)~9月6日(日)に東京・サンシャイン劇場にて。その後、18日(金)~20日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、22日(火・祝)に愛知・刈谷市総合文化センター 大ホールと巡演する。また本作は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じて上演される。

取材・文:岡山朋代