『チア男子!!』 (C)朝井リョウ/集英社・LET'S GO BREAKERS PROJECT

 ドラマ「私たちはどうかしている」(日本テレビ系/毎週水曜午後10時)で、りんとした着物姿が美し過ぎると話題を集めている横浜流星。10月23日からは吉高由里子とW主演した映画『きみの瞳が問いかけている』の公開も決定しているなど、今、最も旬な俳優の一人だ。そこで今回は、横浜のこれまでの出演作を振り返るとともに、改めて彼の魅力に迫りたいと思う。

 横浜は、2011年に「仮面ライダーフォーゼ」で俳優デビュー。14年2月から放送された「烈車戦隊トッキュウジャー」でトッキュウ4号/ヒカリ役を演じて注目を集めた。

 同作は、列車や電車をモチーフとした戦隊もので、横浜の演じたトッキュウ4号/ヒカリは、現実主義者で負けず嫌い、気分屋でわがままな一面もあるが、仲間思いという役どころ。

 横浜は、極真空手の世界大会で優勝した経験も持つほどアクションに長けている俳優としても知られるが、同作では、自らアクションをこなしたシーンも多かったという。まだ、演技はつたないところもあるが、アクションを含め、横浜のキャリアを語る上では欠かせない作品といえよう。ちなみに、同作には、トッキュウ1号/ライト役で志尊淳も出演している。

 17年には、興行収入14億円を突破した映画『キセキ-あの日のソビト-』に出演。同作は、GReeeeNの曲「キセキ」の誕生までの実話を基に、音楽に熱中する青年たちの青春をまぶしいほど真っすぐに描いた作品。

 松坂桃李と菅田将暉が主演し、横浜はピアノが得意な歯医者の息子というNaviを演じた。同作での横浜は、知的な眼鏡姿とノリノリで歌いはしゃぐ姿のギャップがとにかくキュート。存在感のある役者が並ぶ中でも、しっかりと印象を残している。

 劇中でGReeeeNのメンバーを演じた菅田、横浜、成田凌、杉野遥亮は、ユニット「グリーンボーイズ」名義でCDデビューも果たした。

 18年に公開された映画『虹色デイズ』も、『キセキ』同様、青春を存分に味わわせてくれる作品だ。

 同作は、水野美波の同名コミックスを原作に、男子高校生4人の友情と恋を描いた青春ストーリー。横浜は、友人たちに刺激されて、本当の恋の相手を探す・恵ちゃんを爽やかに演じた。

 こうして横浜の出演作を並べてみると、横浜には青春映画がよくハマる。『キセキ』同様、同作も佐野玲於、中川大志、高杉真宙とイケメン若手俳優が集まったが、その中にあって、横浜は爽やかなイケメンでありながら、強く前に出過ぎず、アクが強過ぎないのがいい。自然とそこにいながら、存在感はしっかりと出している。

 同じことが19年公開の映画『チア男子!!』にも言える。同作は、作家・朝井リョウが、実在する男子チアリーディングチームをモデルに書き上げた物語で、7人の大学生が前代未聞の“男子チアリーディング部”を創設するために奮闘する姿を描く。

 横浜は主人公の坂東晴希を演じ、柔道一家に生まれながらチアリーディングへの思いを強くしていくさまを、感情たっぷりに演じた。男子ばかりの青春スポーツものでありながら、暑苦しくなりすぎないのは、横浜あってこそとも思える。

 一方、横浜を語る上で、外せないのがドラマ「初めて恋をした日に読む話」(TBS系)だ。

 同作は、深田恭子が主演したラブコメディー。予備校教師の春見順子の前にタイプの違う3人の男性が現れ、それまで何をやってもうまくいかなかった順子の人生が動き始める。横浜は、髪をピンクに染めた不良高校生・由利匡平、通称「ユリユリ」役で、大ブレーク。ユリユリはおばかで生意気な高校生だが、真っすぐに恋心をぶつけてくる姿は胸キュン必須だ。

 当時、筆者は撮影真っただ中の横浜に話を聞く機会に恵まれたが、それまで横浜はいわゆる「胸キュンシーン」と呼ばれるものをやったことがなかったらしく、「すごくハードルが高い」と苦笑いをしながらも、「あまり照れずに(胸キュンシーンの撮影も)できる」と話していたのが記憶に残っている。

 そして、ユリユリのトレードマークでもあったピンク髪に対し、「顔が地味だから、黒髪に戻すのが怖い。(今は)ピンクのおかげで際立っていてありがたい」と笑っていたのが印象深かった。そのせりふからや態度からも、謙虚で真摯(しんし)な印象を受け、好青年という言葉がぴったりだと感じた。

 その後、横浜は、そうしたイメージを破るかのように、ドラマ「あなたの番です-反撃編-」(日本テレビ系)での大学生役、映画『いなくなれ、群青』での七草役と次々と記憶に残る役柄を演じている。

 特に、冒頭でも紹介した、現在放送中の「私たちはどうかしている」は、横浜にとってはこれまでにない役どころだと言えよう。本心を隠した陰のある表情や、クールで冷たい物言いなど、爽やかな印象とは一線を画す演技を見せる。横浜の新たな魅力が開花するのではないかと期待も高まる。(嶋田真己)