左から市川月乃助、市川春猿、市川笑三郎 左から市川月乃助、市川春猿、市川笑三郎

7月31日、新派名作撰『葛西橋/舞踊小春狂言』の製作発表が行われ、出演の歌舞伎俳優・市川笑三郎、市川春猿、市川月乃助が登壇した。

『葛西橋』は劇作家・北條秀司が『佃の渡し』『百花園裏』と共に、東京慕情編の3部作のひとつとして書き、花柳章太郎により1960年に東京・明治座にて初演された。世間に背いてまでも愛を貫いた男女の退廃的な生き方を描いたこの作品は、1975年に東京・新橋演舞場で再演され、水谷八重子(当時は水谷良重)が、おぎん・菊枝の姉妹とパーラーの女主人・美也子の3役を演じた。今回、この3役を市川春猿が早替りで務めるのも見どころのひとつ。『舞踊小春狂言』は1942年に初演された、川口松太郎作『小春狂言』をモチーフにした新作舞踊。小光と小春、芸者の恋と粋を華やかに描く。

春猿は「今回は3役を早替りで演じますが、早替りというより、3役を一つひとつじっくり作り上げて演じたい。内面で見せたいと思います。以前の新派公演では、お芝居と舞踊という上演の形態があったようですので、今回は、復活させてみようという気持ちでおります。私たちが、こうやって新派の作品に出演させていただけるのも、師匠である2代目(市川)猿翁が自分たちをビシビシと鍛えてくれたおかげです」と意気込みを見せた。

『葛西橋』で姉妹と三角関係に、またパーラーの女主人とも関係を持つ友次郎を演じる月乃助は「3人の女性と絡んで、リアルな濡れ場もありまして。男同士の女方さんとやるには見せ方を研究しないと。博打は打つし本当にだらしのない男です。春猿さんとはプライベートでも仲が良いのですが、どうやっていこうか考えています。自分にはない、やったこともない役ですが、気心の知れたメンバーと一緒に全力投球したいと思います」と決意を新たにしていた。

『舞踊小春狂言』で姉芸者の小光を演じる笑三郎は「新派は、春猿さんが出演した『滝の白糸』以来2度目の経験になります。歌舞伎での演技方法をだして良いんだ、八重子さんや(波乃)久里子さんに、私たち女では出せないものがあるよと、教えていただいた。今回は、先入観を持たずに入っていこうと思います」と抱負を語った。

公演は10月6日(土)から26日(金)まで東京・三越劇場にて上演される。チケットは8月31日(金)より一般発売開始。