ミュージカル「フラッシュダンス」

1983年公開の大ヒット青春映画を下敷きにしたこの作品、映画を知っている人は懐かしさでいっぱいになるだろうし、知らない世代には新鮮に映るに違いない。鮮やかなダンスシーンと、耳馴染みのあるヒット曲、80年代ピッツバーグの空気感、そしてレトロな匂い…。夢に向かって葛藤を抱えつつ、ひたむきに頑張る主人公アレックスの姿は観る者をキュンとさせ、明日を生きるエネルギーを与えてくれること請け合いだ。

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愛希れいかが演じるアレックスは元気いっぱいで溌剌、ごく等身大の女の子。ダンサーになりたいと心から願いながら、きちんと訓練を受けていないというコンプレックスもあり、バレエ学校のオーディションを受ける勇気が出ない。愛希はそんな心の揺れを丁寧に描き、ナチュラルな魅力を放っている。何より愛希のエネルギッシュなダンスの素晴らしさ、それを支えるスタイルの良さが説得力を増す。「Maniac」のウォームアップ的な振付や、バー・ハリーズでのショーシーンは見応えたっぷり。1幕ラストでは水をバシャーッとかぶる映画の象徴的な振りもがっつり味わえる。もちろん、有名なオーディションシーン「What A Feeling」でアレックスが踊りながら審査員を魅了するクライマックスは、ワクワクが止まらない!

アレックスの周りにいる人々も、彼女同様に葛藤を抱えている。製鉄所の御曹司ニック・ハーレイ(廣瀬友祐)は製鉄所をリストラする役目を担う。自分がうまくいかない分、アレックスを支えようと頑張るが…。簡売れないコメディアンであるジミー(福田悠太(ふぉ〜ゆ〜))はニューヨークを目指す。グロリアは彼氏のジミーがいなくなって迷いが生じ、ストリップクラブへと移籍する。

興味深かったのは「Grolia」が、グロリア(桜井玲香)のストリップクラブで自暴自棄になる曲として使われているところだ。明るい曲調に反してダークな内面を露わにする様子を、桜井が見事に表現してみせた。ハリーズのダンサー仲間のキキ(Dream Shizuka)とテス(石田ニコル)が歌とダンス、どちらもグルーヴが効いている。ストリップクラプ・カメレオンのオーナーC.C.(植原卓也)が、まさにカメレオンのように、ぬるっとした悪役として光っていた。

青春は若さだけで輝ける特別な時期だけど、その裏返しでもある未熟さと自信のなさも付いて回るものだなぁとしみじみ。そんな時に頼れるのは、アレックスの恩人ハンナ(春風ひとみ)やバーのオーナー・ハリー(なだぎ武)などの、人生の先輩たちだという、人生の原則も描かれている。

とにかく歌、踊り、芝居と色濃い時間が楽しめる。劇場でぜひ味わってほしい。

東京公演は、9月26日(土)まで、日本青年館ホールにて上演中。

取材・文:三浦真紀

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