木村達成×佐藤寛太 撮影:源賀津己

白井晃の演出による、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」の幕が上がる。8月下旬、初日を約1ヵ月後に控えて稽古に臨むジョバンニ役の木村達成、カムパネルラ役の佐藤寛太(劇団EXILE)に話を聞いた。

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KAAT10周年プログラムのキックオフとなる本作は、1995年に初演され、翌96年に再演された「イーハトーボの音楽劇『銀河鉄道の夜』」を新たに“再生”するもの。初演では宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」を題材に、能祖將夫が上演台本、バイオリニストで作曲家・編曲家の中西俊博が音楽監督、シンガーソングライターのさねよしいさ子が作詞・作曲・出演を担った。

今回の上演版には、演出を手がける白井をはじめ、初演のクリエイティブスタッフが再集結。キャストには木村と佐藤のほか、ザネリ・青年役の宮崎秋人、男(ケンジ)役の岡田義徳が名を連ね、初演に続いてアメユキ役をさねよしが演じる。

稽古スタートから2週間が経ち、佐藤は「作品テーマの解釈はキャストに委ねられている気がする」と白井の演出スタンスを紹介。木村も「僕たちが受け取ったものを演技に出してほしい、という白井さんのメッセージを感じます」と続く。だとしたら、二人はこの作品をどのように捉えているのか──。

ジョバンニとカムパネルラの旅路には、座礁したタイタニック号の被害者が銀河鉄道の乗客として居合わせるなど“死”の影がつきまとう。これに、佐藤は「生きていることや日常のありがたさを実感する」「日ごろあまり身近でない“死”に触れることで、宮沢賢治の死生観をキャッチしてもらえたら」と語った。

カムパネルラの取った行動に「他人のために生きる自己犠牲について深く考えた」と話すのは木村。また劇中の“生きていたことを証明する、それが残された者の務め”というセリフを挙げながら、「周りの人が亡くなることは誰にでも起こり得ることで、その人たちを忘れないでいることが、ジョバンニに象徴された役割だと思います」と自負した。

個人で捉えた作品のテーマを述べながらも、木村と佐藤は「感じ方は人それぞれ」と多様な価値観を持つ観客に向けた気配りも忘れない。「賢治がこの作品から何を受け取ってほしかったのか、僕らも役を全うしながら読み解いていきます」「劇中にたくさん散りばめられた胸を打つセリフから自由に感じてください」と観客に呼びかけ、取材を結んだ。

公演は9月20日(日)~10月4日(日)に、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて、まもなく開幕。

取材・文:岡山朋代