『星の王子さま –サン=テグジュペリからの手紙–』

KAAT神奈川芸術劇場プロデュースによるダンス作品『星の王子さま –サン=テグジュペリからの手紙–』が、今秋幕を開ける。8月中旬のプレ稽古期間中、本作の演出・振付を手がけ、自身も出演する森山開次に構想を尋ねた。

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フランスの作家、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる小説『星の王子さま』をベースに、彼の人生や『夜間飛行』といった他作品もモチーフに散りばめつつ展開される本作。キャストにはアオイヤマダ、小㞍健太、酒井はな、島地保武らダンサーが名を連ねるほか、歌手の坂本美雨もステージを彩る。

音楽座ミュージカル在籍時の演目として、また白井晃の演出版(2005年)に出演したことから『星の王子さま』に親しみを覚えていた森山。「自分が手がけたらどうなるか、挑戦したい作品のひとつだった」と企画の始まりを紹介し、「その世界を分解・再構築した上で、身体表現で表してみたい」と意気込んだ。

“大切なものは目に見えない”に代表される小説の有名なフレーズも「登場しないことは確実」「そもそも劇中で言葉を用いる可能性が少ない」とクリエーションの初期段階で述べるほど、森山は身体表現を追求する構えを見せる。観客によっては哲学的で難解と感じられるテーマを、ノンバーバルでどのように伝えるのか──。

そう尋ねると、森山は『星の王子さま』の1章で綴られるエピソードを持ち出した。子どもが描いた、象を丸呑みして体がデコボコに膨れた“ウワバミ(大蛇)”の絵を、大人は“帽子(シルクハット)”としか捉えられない。この場面について「子どもの方が発想力豊かで、大人になるほどセンサーが衰えることは現代にも通じる」と感じた森山は、「コロナ禍で視野が狭くなりがちな今だからこそ、同じ物事をいろんな視点から見つめて解釈することが必要」として“想像力”の大切さを訴えた。

この力を鍛えるには「言葉より身体表現の方が、想像の余白やグレーゾーンを残しておける」と森山。そういった意味で「一般的にイメージされる『星の王子さま』をなぞることはせず、ビジュアルからして別物になるでしょう」と予告し、「原作とのギャップを楽しんでください」「大切なものだからこそ、お目にかけたい」と笑ってみせた。日比野克彦の美術・ひびのこづえによる衣裳が、森山のビジョンをどのように支えるか──。こちらもぜひ劇場で確かめて欲しい。

公演は、11月上旬~中旬に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。その後、11月21日(土)に長野・まつもと市民芸術館、12月5日(土)・6日(日)に京都・京都芸術劇場 春秋座、12日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールと巡演する。10月3日(土)の一般発売に先駆け、9月27日(日)より先着先行受付開始。

取材・文:岡山朋代