左から、人形遣い・吉田簑紫郎、三味線・鶴澤寛太郎 左から、人形遣い・吉田簑紫郎、三味線・鶴澤寛太郎

コロナ禍により、今年1月の初春公演以来休館していた国立文楽劇場が、10月31日(土)に開幕する「錦秋文楽公演」で本公演を再開する。それに先駆け、2日間のスペシャル企画「ザ・グレイト文楽」を開催。公演の生配信も決定した。

「ザ・グレイト文楽」チケット情報

「ザ・グレイト文楽」は、人形遣いの重鎮・桐竹勘十郎と、今日本で一番忙しいと言われるチェリスト・宮田 大がコラボする2部構成の公演。作曲家・黛 敏郎が文楽の世界をチェロで表現した楽曲『BUNRAKU』を宮田が演奏、それに合わせ勘十郎が人形浄瑠璃の名作『関寺小町』をイメージした演技を披露する。後半は『万才』『海女』『関寺小町』『鷺娘』の四段からなる、四季がテーマの舞踊劇『花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)』を上演。チェロの音で舞い、さらに太夫・三味線と演じる勘十郎の初役『関寺小町』の見比べ、また音楽表現の聴き比べも。この贅沢な企画公演に参加する人形遣い・吉田簑紫郎と三味線・鶴澤寛太郎が意気込みと見どころを語った。

文楽人形は3人で1体を操る“三密”状態であり、足遣いや主遣いなど道具を使い回すため、コロナ禍では上演が難しかった。舞台の休演中は「髪を銀髪にして、体力作りに深夜の倉庫で肉体労働をしていました」という簑紫郎と、「家では手ぬぐいを三味線の糸にかけて音を鳴らさずに弾き続ける“腕かため”というトレーニングを」と話す寛太郎。ふたりは昨年9月、宮田と勘十郎の共演舞台に参加した。「チェロは楽器として一番邦楽になじむ楽器だと思う。『BUNRAKU』という曲にある太棹三味線のような音色や和音階は難しい表現ですが、宮田さんの演奏はすごく上手」(寛太郎)。「洋楽とのコラボは難しいですが、チェロは相性がよくて違和感がなく、『関寺』は本当によかった」(簑紫郎)。

『花競四季寿』は本公演再開に向けた美しい曲だが、今回の三味線は四場通して寛太郎がメイン奏者のシンを務める。さらに師匠の竹澤宗介がトメに座る。並び順で一番後輩が座る席のスソに、格上で実力ある人を据える場合に敬意を払ってトメと表記するそうだが、最近は滅多になく、これも企画公演ならでは。寛太郎は「“超”挑戦、プレッシャーですよ。楽しみですなんて言えません。みんな先輩なので底上げしてもらいます。実際は僕ひとりパニックになってると思いますけど、どうやるのか観ていただけたら」と気合が入る。また、人形遣いの簑紫郎は『海女』『鷺娘』の両方を遣う。「今回は勘十郎さんを含め全員が初役で、本公演とは違う新鮮なものを楽しんでいただけるのでは。こんな形や配役は、なかなか観ることができない貴重な公演ですよ」。

公演は10月21日(水)・22日(木)国立文楽劇場にて。生配信は22日(木)19時公演が対象。劇場公演のチケットは完売。配信チケットをご利用下さい。

取材・文:高橋晴代