そして、赤い髪と左頬の十字傷、名のとおりの緋色の着物という外見。
「衣装と髪形はこだわりました。衣装は割りとすんなり決まったんですけど、髪形はどのくらい長いかとか、とのくらい軽いかとか、かなり細かいところまで調整していきながら作っていきましたね。マンガでああいう風貌だというのがあるから、すでに原作ファンの皆さんにはイメージはできているわけじゃないですか。それを裏切り過ぎることも嫌だったんですよ。あのビジュアルをリアルに落とし込んだらどうなるかっていうのがキーワードで、そこを探りながら作っていきましたね。最初は全然うまくいかなかったんですけど、現場に入って1週間くらいしたときに、“今日、来たな!”っていう日があったんですよ。“これこれ!!”みたいな感じで、いいバランスの髪形に出会えた瞬間があって(笑)」
そう言って笑う、佐藤。彼の言葉にある、「あのビジュアルをリアルに落とし込んだらどうなるか」はキャラクターのみに関わらず、本作の他の部分に関しても言えることで、また本来、マンガの実写映画化において間違いなくキーワードになってくることだ。
原作コミックやアニメでは、アクロバティックな剣の技がさまざまに繰り出され、そこが醍醐味ともなっている『るろうに剣心』。そこに関しても本作は、可能な限りのリアルな見せ方で描写していく。マンガ・アニメ的なものを、CGを使って実写でさらにマンガ・アニメ的に見せるというのも、コミック原作の映画においてはひとつの表現だろう。しかし明治という世の世態風俗の描写含めて、『るろうに剣心』が志向しているのは、リアルなものだ。そこに嘘はあるにしても、明治という世の匂いや空気が感じられるような作り方、撮り方を志向してもいる。