ドラマ化や映画化もさかんな日本の漫画作品。さまざまなタイトルが脚光を浴びるなか、「そういえばこの原作者、今は何を描いてるんだろう?」と気になったことはないだろうか。

今回は有名な作品の原作者が、現在どんな漫画を描いているのか――ヒット作を経た後の“進化”と“変化”について調べてみた。

 

『鋼の錬金術師』作者が描く農業エッセイ

錬金術をモチーフに骨太なドラマとバトルを描き、発行部数6千万部を超えるという大ヒット作『鋼の錬金術師』。その作者・荒川弘(あらかわひろむ)氏は現在、農業がテーマの作品2つに取り組んでいる。

1つは今年夏にアニメ化され、第2期の制作も決まっている『銀の匙 Silver Spoon』。受験戦争からドロップアウトした主人公が北海道の農業高校へ入り、人間的に成長していく姿を描いた良作だ。

しかし、ここでお薦めしたいのはもう一方のエッセイ漫画『百姓貴族』。少年向けに良くも悪くも落ち着いた描写の『銀の匙』と比べ、こっちは圧倒的にシニカルで毒舌。ホンネをぶっちゃけまくる“荒川節”が冴え渡っている。
 

 

そもそも作者の実家「荒川農場」は、テレビにも出演したことがあるリアル農家。ご先祖は明治時代に北海道へ入植してきた開拓農民という、ガチの農業一族なのだ。そこで娘として生まれ育って(荒川氏は女性である。念のため)農業高校にも通っていた作者の体験談が、ゆるい絵柄&容赦ないトークによって赤裸々に語られる。

深夜の牛舎でクマの気配を感じ死を覚悟した話、野菜ドロボーや災害による大被害、何度も死にかけ生還した父親のダイ・ハードぶりなど、マジでそれ実話ですか?とツッコミたくなるようなエピソードが満載。

農業高校時代の話には『銀の匙』で見たようなシーンも描かれており、ファンの人は元ネタ探しをしても楽しいかも。もちろん純粋なエッセイ漫画としても屈指のおもしろさを誇る。