90年代に、この国の音楽シーンを席巻し、大熱狂を巻き起こした音楽ムーブメント"渋谷系"。
その名称の通り、数多くのレコード店やライブハウス、クラブが立ち並ぶ音楽の街、渋谷を中心にして巻き起こったこのムーブメントからは優れたバンドやクリエイターが数多く登場しました。
ちなみに、今年はFlipper's Guitarの名盤『CAMERA TALK』のリリースから四半世紀。シーンを象徴するアルバムの25周年を祝してか、タイトルもズバリな『渋谷系』(若杉実著、シンコーミュージック刊)という当時のシーンを振り返る回顧録的な本が発売され、月刊のデザイン誌で特集が組まれるなど、渋谷系が再注目されています。
ところで、アニメソングや声優ソングにも「渋谷系」の音楽エッセンスを持った楽曲が存在しているのを、皆さんはご存知でしょうか?
"アキバ系"のアニソンや声ソンに、"渋谷系"のオシャレな音楽要素が組み合わさり、"アキシブ系"なんて呼ばれ方をされるこれらの楽曲。今回は、そんなアキシブ系のオススメ曲をご紹介させていただきます!
そもそも"アキシブ系"って何? その音楽的魅力とは!?
まずは、各楽曲の紹介に入る前に"アキシブ系"と呼ばれる音楽ジャンルについて考えてみたいと思います。
その際に、必ず触れておかなかればいけないキーパーソンが、ビクターエンタテインメント内のレーベル、flying DOGの音楽プロデューサーである福田正夫さんです。
福田さんは、自身がプロデュースしたアニメ作品に、渋谷系文脈のバンドやミュージシャンを積極的に起用。そのオシャレで洗練されたサウンドは、アニソンの世界に新しい風を吹き込みました。いわば、福田さんはアキシブ系の第一人者であり仕掛け人。
元々、ビクターエンタテインメントからリリースされる声優さんのアルバムは、通好みのミュージシャンが楽曲制作を手掛けることが多かった(宮村優子さんの作品における平沢進さんや大槻ケンヂさんの参加など)のですが、こうした方向性は2007年にflying DOGがアニメ、声優中心のレーベルとして始動したことで更に推し進められます。
その結果、かつて渋谷系と呼ばれていたバンドやミュージシャンがflying DOGのアニメ作品に参入。また、福田正夫さんとflying DOGが先達となったことで、他のレーベルからも元渋谷系のクリエイターたちが楽曲制作に参加したアニソンやサウンドトラック、声ドルソングが多数登場します。
ポスト渋谷系の名バンドであるLove Tambourinesの元メンバー、宮川弾さんも所属している音楽制作事務所のマニュアル・オブ・エラーズ・アーティスツや元Cymbalsの沖井礼二さんといったミュージシャンは、そうしたアキシブ系クリエイターの代表格。
そうした流れを受けて、2007年にはコンピレーションアルバム『AKSB~これがアキシブ系だ!~』がリリースされます。
タイトルにも"アキシブ系"を謳った本作には、福田さんが関わったアニメ作品の楽曲を中心にアキシブ系の名曲が数多く収録されており、その先進的でモード感のある楽曲の数々は今もキラキラとした輝きを放ち続けているのです。