"アキシブ系"の本質とは? その魅力を考える
ただ、このアルバムを聴いていると、参加しているミュージシャンが渋谷系のオリジネーターだけに留まらず、例えば、海外のミュージシャンや80年代のニューウェーヴ、テクノポップ・クリエイターである鈴木さえ子さん、DCPRGを筆頭に数多くの音楽プロジェクトを行い、また、文筆活動や批評家としても活躍されている菊地成孔さんなどなど、実に幅広いアーティストが参加していることに気付かされます。
しかしながら、それらの楽曲はいずれもハイセンスであり、従来のアニソンに囚われない自由さに溢れているという大きな共通点を有しており、この『AKSB~これがアキシブ系だ!~』を通しで聴いてみると、国籍も時代性もバラエティーに富んだミュージシャンが集まっているにも関わらず、そこからは不思議と一貫した音楽性を感じられるのです。
これを顧みるに、90年代の渋谷系がギターポップやネオアコ、AOR、ハウス・ミュージック……といった様々な音楽を発掘、紹介するキュレーター、レコードバイヤー的な側面と、そうした音楽を優れたポップ・ミュージックへと昇華させるアーティスト性の両面を持ち併せていたのと同じく、スタイリッシュな音楽の数々をアニソンへ融合させる、その意欲的な試みこそが"アキシブ系"なのだと考えることができます。
そうした異なるカルチャーが交わるおもしろさを見事に音楽で表現している声優さんの代表例が、花澤香菜さんです。
カジ・ヒデキさんやQYPTHONEの中塚武さんをはじめとするクリエイターからの楽曲提供を受け、"渋谷系声優アイドル"とでも呼ぶべき洗練された音楽活動を行っている花澤さんは、こうしたオシャレな音楽要素がアニメ、声優の世界と結び付いた、そのエキサイテングなフィーリングを雄弁に伝えてくれます。
こうしたアキシブ系の楽曲は、そのいずれもが高い完成度を有しており、そのサウンドは、アニメファンだけではなく音楽ファンも楽しませてくれます。やや前置きが長くなってしまいましたが、そんなアキシブ系の名曲たちをいくつか紹介していきましょう。