新型コロナウイルスにより大きな打撃を受けた劇場文化の復活を祈願する『日本の劇場文化 復活祈願祭』が、11月3日に大阪・道頓堀で行われた。

祈願祭に先立ち行われた記者会見では、発起人の歌舞伎俳優・市川海老蔵と、能楽師で人間国宝の大槻文藏、文楽の人形遣い・桐竹勘十郎、日本舞踊・上方舞の山村友五郎、落語家・桂米團治といった上方の伝統芸能を代表する面々が出席。今回の企画について海老蔵は「コロナ禍により、劇場文化に携わっている方々のみならず、多くの方々が大変な思いで日々生活をしており、また、劇場に足を運んでくださるお客様も少なくなっている状況で、今回の祈願祭を発足させていただきました。大阪万博が開催される予定の2025年は、道頓堀に劇場ができて400年という節目になります。そこに向けて、少しでも大阪の伝統文化がさらに豊かに、また、大阪のお客様が伝統文化を楽しんでいただけるようになることを切に願って、行わせていただくことになりました。今日を皮切りに、大阪の伝統文化のみならず、日本の伝統文化、エンタテインメントの発展につながることを願っています」と思いを語る。

そんな海老蔵の思いに賛同した大槻文藏らも「世阿弥は『芸能は寿福増長のものであり、悪魔を払う力がある』と伝えております。芸能をご覧いただくことで、気持ちが和らぎ、安心していただくというような役目があると思っております」(文藏)「リモートでご覧いただく形も増えましたが、やはり舞台芸術は生で観るのが一番。皆さまの心の落ち着きが戻りましたら、ぜひ劇場に戻ってきていただきたいと切に願っております」(勘十郎)「演者だけでは劇場は成立しません。衣裳、小道具、かつらなど諸々のスタッフもですが、皆さまのお力添えが何よりも必要でございます。足をお運びいただけること、心よりお待ち申し上げております」(友五郎)「これから上方文化を盛り上げていくことによって、日本全体の舞台芸術が大きくなることを望んでおります」(米團治)などとコメントした。

会見後には道頓堀の船上で市川海老蔵が演舞『迦具土之舞(かぐつちのまい)』(『SOU~創~』より 作:長田育恵)を披露。会見で「迦具土は火の神なので、復活祈願に火をつける意味を込めています」と語ったように、海老蔵演じる須佐之男命(すさのおのみこと)が、火の神々の力を得て悪神退治をする様を、迫力ある群舞で魅せた。

船上式典には海老蔵の長女・市川ぼたん、長男・堀越勸玄も参加。ギャラリーに向かってひと言挨拶し、観客を沸かせた。

取材・文:黒石悦子