左から、王佳俊、朱潔静  (c)nakajima hideo 左から、王佳俊、朱潔静  (c)nakajima hideo

中国の伝統舞踊や歌舞、声楽、器楽にクラシックバレエやモダンダンスを融合させた総合芸術団体として、世界中で上演を重ねている上海歌舞団。日本でも2005年に『覇王別姫』、2007年には『WILD ZEBRA』と公演のたびにファンを増やしており、今回は2年前の日本ツアーで絶賛を浴びた『朱鷺』が待望の再来日だ。日中国交正常化45周年を祝う記念公演でもある本作。8月の公演を前に、7月19日、メインダンサーの朱潔静と王佳俊、オフィシャルサポーターを務める草刈民代を迎えて制作発表会が行われた。

舞劇『朱鷺』-TOKI- チケット情報

本作では『羽衣伝説』や『白鳥の湖』などの異類婚姻譚をモチーフに、村の青年ジュンと朱鷺の精ジエの時空を超えた出会いと別れが描かれる。朱と王の表現力豊かな踊りはもちろん、東洋の切り絵を思わせる舞台美術や、切なくドラマチックな楽曲、美しいグラデーションの衣装、一糸乱れぬアンサンブルなど見どころも満載だ。物語は終盤、自然破壊を繰り返す人類と消えゆく朱鷺の姿も描かれ、現代社会に警鐘を鳴らす作品となっている。

上海歌舞団団長・陳飛華は「今年は総勢70名と、2年前より大きな規模で来日いたします。本作のテーマは“地球、生命、人類”。細かいところまで手を加えており、さらに良い舞台になっていると思います」と話した。

「セットや衣装など、すべての面でアジアの美学を込めた作品。必要なのは、とても細かい動きや表現です」と言うのは、スラリとした美女の朱だ。「こういう朱鷺の動きを踊りに取り入れています。実際に朱鷺の様子を一日中観察したんですよ」と、立ち上がって腕を背と頭に巻き付けるような動きを披露した。

王も「最後のほうの現代の場面では、無機質なセットに、踊りもコンテンポラリーダンスに近いものになります」と、叙情的な古代の場面とは異なる面もあることを解説。「日本のアニメやラーメンが大好き。終演後の楽しみです」と照れ笑いするなど、端正な横顔に若い青年らしい素顔をのぞかせた。

オフィシャルサポーターとして登壇した草刈は、上海歌舞団の魅力を「中国文化のテイストが土台にある上で、素晴らしい舞台が展開されているところ。それはこの舞踊団にしか表現できないものです」と語る。「ダンサーも国によって特徴や魅力があるんですよ。王さんは美しくてたくましいですが、けしてマッチョではない。朱さんも優しいたたずまいですが、強さも感じさせるのが魅力です。アンサンブルのフォーメーションがビシッと揃っているところも、東洋のカンパニーならではと感じますね」と、海外での舞台経験も多い元ダンサーならではの視点で話した。

草刈も太鼓判を押す、唯一無二の舞台。公演は8月29日(火)・30日(水)東京・Bunkamura オーチャードホール、9月2日(土)・3日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、9月6日(水)から10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、9月13日(水)・14日(木)大阪・オリックス劇場にて。

取材・文 佐藤さくら