■漫画家の収支――原稿料だけならプラマイゼロ!?
普段からネットや動画サイトの生放送を中心に“過激”ともとれる発言が多い佐藤氏だが、実際お会いしてみると激しいイメージとは対極の、おっとりした表情と口調で話す好人物に思えた。失礼を承知で本人にその第一印象をぶつけてみると「よく言われます。結構ぼんやりしてるんですよね」と照れまじりに答えてくれた。
さて、そんな佐藤氏は“3つの顔”を持っている。プロの連載漫画家、オンライン漫画販売サイト『漫画onWeb』の運営者、そして大ヒット映画『海猿』原作者としての顔……だ。
まずは本業、『特攻の島』を連載している漫画家としての収支を詳しく語っていただいた。
「スタッフが今3人いまして、原稿料が1枚3万円で毎月40枚くらい描いてるから120万円。そこから事務所の維持費と人件費などいろいろ払うと大体全部使っちゃいますね」
かつて自身のサイト上で原稿料収入と諸経費が同じくらいと書かれていたが、それは現在も変わっていないようだ。ただし収支がトントンなのはあくまで“原稿料”に限った話。単行本を出している作家さんだと、ここに部数に応じた印税収入がプラスされる。
「『特攻の島』は1巻あたり10万部くらい出ているんで、印税が600万円くらい。それが年に2冊発売されるので1200~1300万円。これに原稿料の1500万円くらいを合わせたのが漫画の収入ですかね。今年は映画の収入が一番多いですけど、普段は漫画がメインです」
なるほど。10万部×定価590円×印税率10%で計算してみると、たしかに1巻の印税額はおよそ600万円になる。印税600万円×2巻+原稿料1500万円=2700万円。これが“漫画家・佐藤秀峰”の年収だ。
なお『特攻の島』連載にあたって、佐藤氏は芳文社としっかり執筆契約を結んだという。本人も「他にはこんな漫画家いないですね」と話す通り、出版業界では執筆にあたって書面をかわす慣習がない。これが漫画家と出版社の間でたびたび報酬額や著作権をめぐってトラブルを起こす火種となってきた。『ブラックジャックによろしく』を連載していた当時、講談社からの理不尽ともいえる仕打ちを告白した佐藤氏だけに、その苦い経験を生かしている様子がうかがえる。