人気漫画『呪術廻戦』(作:芥見下々)。テレビアニメ化もされ、2021年冬には『劇場版 呪術廻戦 0』の公開も控えています。
『呪術廻戦』は、2018年3月より週刊少年ジャンプで連載開始。人の負の感情から生まれる「呪い」を祓う虎杖(いたどり)悠仁ら「呪術師」たちと、「呪霊」との戦いを描くダークファンタジーです。
なぜ、これほどまで『呪術廻戦』が人気になっているのでしょうか
大東文化大学助教で心理・キャリアカウンセラーの井島由佳さんは、まさに「呪い」が多くの人の心を惹きつける要素だと言います。
「『呪術廻戦』における呪いは、憎悪、嫉妬、焦燥、恥辱、悲哀、絶望、苦悩、後悔といった、人間から生まれる負の感情であり、負のエネルギーの集合体です。
作品内で呪霊たちは恐ろしく描かれていますが、決して遠い存在ではありません。なぜなら、私たちが今生きている世界は、呪いにあふれているからです。
SNSではときどき「炎上」が話題になります。誹謗中傷に罵詈雑言。まさに呪 いのオンパレードで、多くの人たちが日々、呪いを生成しています」。出典(「『呪術廻戦』流自分を変える最強の方法」)
人々の鬱屈とした思いも一つの「呪い」の温床。人々は「呪い」を身近に感じ、自分の中にも「負の感情」が存在するからこそ、作品が支持されたのかもしれません。
「呪い」というと、とても恐ろしくて、口にしてはいけない存在という印象を抱くかもしれません。でもよく考えてみると、「呪い」のもとは身近にあります。
それは、自分自身のコンプレックスであったりもします。 また、吐き出せずに重く積み重なった、悩みだったりもします。 『呪術廻戦』は、この部分がとてもよく表現されている作品であると、私は一読者としてずっと感じてきました」出典(「『呪術廻戦』流自分を変える最強の方法」)
虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇といった登場人物が困難に立ち向かい、強くなっていく姿と、自分自身の成長と重ね合わせられるのもこの作品の魅力。
それでは、井島由佳さんの書籍「『呪術廻戦』流自分を変える最強の方法」(アスコム)より、子育てにまつわる“呪い”を祓う『呪術廻戦』の名セリフと井島さんの解説をお届けしたいと思います。
子育てにまつわる“呪い”を祓う『呪術廻戦』の名セリフ
コロナ禍による「先が見えない不安」には…
恐怖や不安から人の心をネガティブにしがちなコロナ禍。
ストレスも溜まり、八方塞がりな人に送りたいのは、作中で人類最強とされる五条悟の一言です。
【気づきを与えるシーン】
渋谷事変の首謀者である偽夏油が仕掛けた罠に一瞬の隙を突かれた五条は、獄門疆に封印されてしまった。
いったんは悔しがり、偽夏油に怒りを向けた五条だったが、あがいたところでどうにもならないと観念し、次のようなひと言を発する。
「まずったよなぁ色々とヤバイよなぁ …ま なんとかなるか 期待してるよ 皆」
〜五条悟が自分自身に言ったセリフ (呪術廻戦11巻 第91話「渋谷事変9」より)
もしも同じ状況に追い込まれたら、叫んだり、助けを求めたり、必死になって脱出方法を考えたりするでしょう。しかし、五条悟は違いました。
落ち着き払って、何もせず仲間を信じて待つという道を選択したのです。
じつはこの「なにもしない」というのは、ストレスコーピングと呼ばれるストレス対処法のひとつで、自分の力だけではとうてい打開することのできない難局に遭遇したときに取り入れると、心身への負担を軽減する効果をもたらしてくれます。
あたふた動いたり、気焦りしたりしても、状況は好転しない。それがわかりきっている状況下では、いったん止まってみることが大事です。腹をくくった人間、覚悟を決めた人間は強いです。
ものごとに真っ直ぐ取り組むことができ、余計なことを考えなくなります。
待つと決めたら待つ。 なるようにしかならない。 そうやって割り切ることができると、ストレスのみならず、負の感情も生まれにくくなります。出典(「『呪術廻戦』流自分を変える最強の方法」)
「勿論、五条は何か策を持っているとも考えられますが、ひとつのあり方ですね」と井島さん。
人生では自分の力ではどうにもならないと感じる事態は多いもの。そういう時は無理に対処しようとしなくてもいいのかもしれませんね。