(C)2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会

あの「別に」騒動から5年。なんと、沢尻エリカの人気が同年代の女子を中心に高まっている。

彼女の5年ぶりの主演映画『ヘルタースケルター』が、公開45日で200館クラスの公開規模としては異例の150万人動員、興行収入20億円を突破。さらに8月24日に公開された台湾でもOLや学生が詰めかけて大ヒットしているというから驚きだ。

一時は芸能界から追放されてしまうのではないのか? あるいは海外に移住してしまうのではないか?

いずれにしてもメディアやクリエイターがお騒がせ女優にそっぽを向き、人気も低迷するかと思われていたが、さすがはエリカさま、生命力がほかの人とは違ったようだ。

しかし、なぜここにきて彼女の人気が再燃したのだろう? ウレぴあ総研が調べたユーザーリサーチも参考にしながら、その人気再燃の秘密を検証していきたいと思う。

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振り返れば、冒頭の戦慄の発言は5年前の主演映画『クローズド・ノート』の公開初日の舞台挨拶の場で飛び出したものだった。

いったい何が気に入らなかったのか? 彼女自身も撮影に懸命に臨み、超過密な取材もこなしてきたというのに、なぜ最後の最後にすべてを台無しにするような態度をとったのだろう? いずれにしてもそれが要因となって、同作は関係者が見込んでいた動員数を大きく下回ってしまった。

そして彼女自身も、そこから始まった度重なるスキャンダルによってそれまでのクリーンなイメージからダーティなキャラへと変貌。映画やドラマ、CMなどのクリエイティブな現場からは遠ざかることになったわけだ。

普通の女優ならそれでTHE END。芸能界から消えて、今ごろは週刊誌の「あの人はいま」みたいなコーナーであることないこと書かれていたかもしれない。でも沢尻エリカは違った。

考えてみれば、この5年、沢尻エリカを作品で見ることはなかったが、その名を目にしないことはなかった。結婚、別居、離婚騒動、芸能界への復帰とその後のトラブル……その言動はよくも悪くも派手で、だからワイドショーや週刊誌も彼女のスキャンダルを常に取り上げた。

これがどうでもいい三流の芸能人だったら、あそこまで大きく扱われることはなかったはずだ。だが、沢尻エリカはメディアにとっても一般大衆にとっても気になる存在、目が離せない存在であり続けた。

それは本人の意思とは関係なく、彼女が唯一無二の圧倒的なオーラをまとい、いまも独自の輝きを放ち続けているからだろう。だから沢尻エリカは死ななかったのだ。

と同時に、以前から評価されていた彼女の美と演技力をこのまま消滅させるのはもったいないと思うクリエイターが数多くいたのも見逃せない大きなポイント。『ヘルタースケルター』のメガホンをとった、写真家の蜷川実花もその中のひとりだった。

原作は岡崎京子が1996年まで祥伝社の「FEEL YONG」で連載し、彼女の交通事故によって未完になっている伝説のコミック(2003年に単行本化)。

蜷川が「2年半前からエリカをイメージしていた。彼女しか思い浮かばなかった」と映画の製作時に語り、沢尻本人も製作会見で「この役を本当にリスペクトしている」と言い放ったのも記憶に新しいが、全身整形のトップモデル・りりこが人気と美の衰えに苦悩するストーリーは、誰もが沢尻の生き方、実人生と重ねてみてしまう衝撃的でスキャンダラスなものだった。

その、彼女のパーソナルなキャラとぴったりの設定が今回の復活劇を後押ししたのかもしれない。

もちろん、今回も公開前の取材を体調の不良を理由にキャンセルするなど、相変わらずのエリカさまぶりを見せていたし、実際に公開するまではヒットするのかどうなるか分からなくて、関係者をひやひやさせたはずだ。

だが、めでたく予想を上回る大ヒット。しかも「エリカが好き!」という女性たちの声も聞こえてきた。

 
沢尻エリカの好きなところは?
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ウレぴあ総研が実施した「沢尻エリカの好きなところ&嫌いなところは?」 [ https://ure.pia.co.jp/articles/-/7331 ] のアンケート結果を見ても、「嫌いなところ」の1位(37.1%)は「特になし」だし、2位の「過激な言動」(21.8%)、3位の「挑発的なキャラクター」(17.7%)、4位の「自由過ぎるキャラクター」(9.73%)はそれぞれ「好きなところ」の5位「強きなキャラクター」(7.05%)、7位「スキャンダラスな言動」(1.76%)、4位「自由奔放なキャラクター」とほぼ重なるもの(2012/9/19現在)。

沢尻エリカの嫌いなところは?
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要するに表裏一体。同年代の女性が持ち合わせていない彼女のそうした際立ったキャラが時には反感を呼び、嫉妬を招き、それが「嫌いなところ」となるのだろうが、それもすべて自分にはないからという羨望の裏返しなのではないだろうか。

それよりも「好きなところ」の1位が「美しいルックス」(33.9%)、3位「しなやかな演技力」(11.45%)(2012/9/19現在)であることの方に注目したい。みんなちゃんと分かっているのだ。

だからこそ、『ヘルタースケルター』で彼女の群を抜いた美しさと演技力に圧倒され、再認識した女子たちが、劇中のりりことも重なる沢尻エリカ自身の生き方にも共鳴し始めたのだろう。

それは、世間やマスコミからどんなに叩かれても、罵声も浴びせられてもブレずに凛と立っているしなやかで美しい生き方。どんな障害をも跳ね除けるその強い生き方が、いろいろなことを我慢しながら鬱屈した毎日を生きている女子たちの“沢尻エリカみたいに生きたい”という気持ちを湧き上がらせたのかもしれない。

でも考えてみたら、沢尻エリカの生き方、スタンスはずっと変わっていない。芝居に対する姿勢は常に真摯で、今回の『ヘルタースケルター』の撮影でもリハーサルのときから全身全霊でりりこになろうとしていたし、相手が誰であろうと態度を変えないし、どんなに偉い人でも媚びない。

ただ自分の気持ちや気分に正直なだけで、それをそのまま言動に移してしまうから時には周りが迷惑をこうむったり、トラブルに発展しまうのだが、それでも彼女の姿勢は揺るがない。

逆に、そのときの状況や気分でコロコロと勝手に叩いたり、持ち上げたり、意見を変えたりしているのはマスコミや移り気な一般大衆の方なのではないだろうか? ある意味、無責任で身勝手なこちら側の発言の方が暴力的だし、それこそ沢尻エリカという逸材の女優生命を破壊してしまう危険性すら秘めていた。

でも、そんな目に見えない恐ろしい力にも彼女は屈しなかった。それこそ、その規格外の生命力には、黄金期の映画俳優たちが持ち合わせていたスケールすら感じられる。

今回の映画のヒット、女性たちから支持され始めていることについて本人はどう思っているのだろう? 訊いてみたい気もするが、たぶんまた「別に」と涼しい顔で言われるんだろうな。

でも、それが沢尻エリカという女性の生き方。どんなことがあっても自分を曲げずに突き進んでいくその姿はなかなかマネのできないものだし、だからこそ誰が見てもカッコいいのだ。

映画『ヘルタースケルター』
公開中

キャスト
りりこ:沢尻エリカ
麻田誠:大森南朋
羽田美知子:寺島しのぶ
奥村伸一:綾野剛
吉川こずえ:水原希子
沢鍋錦ニ:新井浩文
保須田久美:鈴木杏(友情出演)
塚原慶太:寺島進
浜口幹男:哀川翔
南部貴男:窪塚洋介(友情出演)
和智久子:原田美枝子
多田寛子:桃井かおり

 

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関連リサーチ実施中!
沢尻エリカ、出演映画でいちばん好きなのはどれ? [ https://ure.pia.co.jp/articles/-/9338 ]
沢尻エリカの好きなところ&嫌いなところは?[ https://ure.pia.co.jp/articles/-/7331 ]


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【映画】沢尻エリカ、5年ぶりの映画復帰作で見せた“女優魂”[ https://ure.pia.co.jp/articles/-/7268 ]


【関連サイト】
映画『ヘルタースケルター』公式サイト[ https://hs-movie.com/index.html ]

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。