角田光代、石田衣良ら選考委員全員を戦慄させ、小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子の禁断のベストセラーを、俳優であり、国内外の映画祭で8冠に輝いた長編初監督作『blank13』(18)で知られる齊藤藤工監督が映画化した『スイート・マイホーム』。
極寒の長野県に住むスポーツインストラクター・清沢賢二は、愛する妻・ひとみ、幼い娘・サチのために念願の一軒家を購入する。
“まほうの家”と謳われたその新居は、地下の巨大な暖房設備が家全体を温めてくれるもの。
そんな理想のマイホームを手に入れ、充実した生活を始めた清沢一家だったが、その幸せな日々がある不可解な出来事をきっかけに身の毛もよだつ恐怖へと転じていく。
次々と起こる不可解な現象に翻弄されながらも、おぞましい真実に立ち向かう主人公の賢二を演じたのは窪田正孝。
家の中にいる“何か”に震撼するその妻・ひとみに蓮佛美沙子が、清沢家に“まほうの家”の営業をする住宅会社の社員・本田に奈緒が扮し、何者かの視線に脅える賢二の兄・聡に窪塚洋介がなりきり、さまざまな思惑と怪異が入り乱れる驚愕のホラー・ミステリーを誕生させた。
いったい、その“家”では何が起こっているのか? 誰もが凍りつく衝撃の真実とは? その恐怖の深淵を探るべく、齊藤工監督と主演の窪田正孝、本作のキーパーソンを怪演した窪塚洋介を直撃!
ほかの組とは違う齊藤組の撮影現場の様子からこだわりの演出と芝居、3人が実際に“怖い”と思っていることまでを語ってもらった。
背筋が凍るほど怖い同名小説を、齊藤工が映画化することになった経緯
――背筋が凍るほど怖い、神津凛子さんの同名小説を齊藤監督が映画化することになった経緯を教えてください。
齊藤 原作がほかのメディアでは辿り着けない恐怖の極地を描いていましたし、そういった作品の角をとってマイルドな形で不時着させることに甘んじた映画をたくさん知っていたので、まず最初に、本当にこの原作を映像化すべきなのか? ということをプロデューサー陣と話し合う期間がありました。
その中で、実写の最大の強みは、“何か”を宿しているのが見ただけで分かる生身の人間が演じるところにあるという考えに行きついて。
勝ち負けじゃないですけど、そこにひとつの活路があるような気がしたし、とてつもないスペックを持った窪田さん、窪塚さん、奈緒さん、蓮佛さんが集まれば原作に太刀打ちできるのではないか?
この人たちを撮影の芦澤明子さんの観点で切り取ることが唯一の光なのでは?
と思うようになったところから現実味の解像度が上がっていきました。
――窪田さんと窪塚さんは本作のどこに惹かれましたか? 何が出演の決め手になりましたか?
窪田 “工さんが監督”と聞いただけで、もうやるしかないなと思いました。
ただ、最初の台本ではネタバレのタイミングと言うか、真実が分かるのがものすごく早かったので、工さんと会って、話を聞かせてもらったんです。
そこで工さんの真意を聞いて、あっ、なるほどって腑に落ちてからは撮影に対する興味しかなかったです。
窪塚 僕は普段は監督のことを「工」って呼んでいるし、同じようなものが好きで、腸活や微生物、無農薬や無添加といったキーワードを通して実はプライベートで繋がっているんです。
そんなやりとりをしている中での今回のオファーだったので、“おお、仕事の話もあるんかい?”という嬉しい驚きがまずありました(笑)。
それに、一緒にクリエイトしてみたいという想いはもちろんずっとあったし、あまりやったことのない“部屋に引き籠っている”聡役を振ってもらえたのも嬉しくて。
と同時に、この役で自分には何ができるかな? どういう味をこの作品に残せるかな? という期待と不安みたいなものもありましたね。