襲名披露公演以来約3年ぶり11回目の博多座公演。母親が博多出身ということで、博多を「第二の故郷」と呼ぶ松本幸四郎にとって、博多座は「常に、前より成長した自分を見せたい」と挑む特別な舞台だ。そんな彼に『二月花形歌舞伎』の公演に先立ち、舞台への思いと見どころを聞いた。
昨年はコロナ禍のなか、歌舞伎史上初のオンライン生配信“図夢(ずーむ)歌舞伎”という新たな試みを行った幸四郎。「舞台が開かなければ役者は何もできないのか、そんなはずはない、とたどり着いたのが“図夢(ずーむ)歌舞伎”でした。今は、自分の生活スタイルに合わせてエンターテインメントを楽しめる時代。今回の配信は、映像としての歌舞伎の可能性を再確認すると同時に、お客様にわざわざ足を運んでもらうための舞台の魅力を改めて考えるいい機会になりました」。
そんな経験を積み、今回は待ちに待った“リアル歌舞伎”での登場。松本幸四郎の他、中村歌昇、中村壱太郎、大谷廣太郎、中村米吉ら華と実力を備えた花形俳優たちを率いて魅せる。幸四郎は昼の部、夜の部の合計4演目のうち3演目に出演。
「昼の部『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』は、『草摺引(くさずりびき)』と呼ばれる華やかな踊り。曾我五郎という歌舞伎の代表的な立役と、舞鶴という代表的な女形が出てきて、色彩的にも雰囲気的にも「これぞ歌舞伎」といえる作品です。同じく昼の部の『松浦の太鼓(まつうらのたいこ)』は、『秀山十種』と呼ばれる曽祖父が得意とした代表作の1つで、忠臣蔵外伝の名作。見どころは、人間味と愛嬌のある松浦公の繊細な感情の変化です。一生懸命演じるだけでは成り立たない役なので、私としてはどれだけ力を抜いて、感情を自由に表現できるかが重要だと思っています。夜の部『御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)』も忠臣蔵にまつわる人気作。台詞劇ではありますが、真山青果の新歌舞伎は、台詞回しが音楽的で美しいので、その魅力を表現できればと思っています。最後が『元禄花見踊(げんろくはなみおどり)』。今回の一座には、“面白い人”というか“おかしな人”が顔を揃えております(笑)。その演者総出演での踊りなので、おそらく相当面白いものになるのでは(笑)。昔からある長唄の踊りですが、今回は博多座の大きな舞台機構を生かした、とにかくにぎやかで派手な当一座ならではの花見踊を新たに制作中です」。
この一座の武器は「歌舞伎が大好きな演者が集まっていること」だと笑顔で語る。リアルな心理劇から、派手な音楽と色彩で歌舞伎らしさを堪能できる演目まで様々なタイプの歌舞伎をコンパクトに堪能できるのも魅力だ。「ぜひ生の舞台を通して、歌舞伎の魅力と、一座の歌舞伎愛を感じてください!」
公演は2月11日(木・祝)~24日(水) 福岡・博多座にて上演。チケットは1月23日(土)より発売開始