2006年初演で、2018年に新曲を加えた新バージョンとして上演されたミュージカル『マリー・アントワネット』が、東急シアターオーブでの東京公演を終え、3月2日(火)より大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演される。2018年からアントワネットの恋人でスウェーデンの貴族フェルセンをWキャストで務める田代万里生に話を聞いた。
幼少の頃からピアノやヴァイオリンを習い、大学在学中にオペラデビューを果たした田代。今作で描かれるフランス革命については、モーツァルトやグルックの音楽を通して触れていたという。「モーツァルトはアントワネットとほぼ同世代で、貴族から注文を受けて貴族のために作曲していました。一方、アントワネットとルイ16世が結婚した年に生まれたベートーヴェンは、自分がやりたい音楽や貴族に支配されない音楽を作りたかった人。貴族と平民が対立していたのは音楽的にも同じ。革命後、フェルセンは民衆が怖くなり、壮絶な人生を送るんです」。
今作は、遠藤周作の小説『王妃マリー・アントワネット』をベースにしたオリジナル作品。豪華絢爛の生活を送っていたアントワネットが、同じMAの名を持つ庶民のマルグリット・アルノーとの出会いや、フェルセンとの悲恋を通して、革命の渦にのみ込まれていく様が描かれる。脚本や音楽を手掛けるのは、『エリザベート』でおなじみのミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイだ。「リーヴァイさんは、クラシックもロックも自由自在に作曲されますが、フェルセンに関しては、クラシカルな歌唱を求められる。僕が学んできたルーツをとても生かせる役柄です。ただ、アントワネットへの無償の愛ゆえに常に自制している役ですが、その表現が難しい。僕は『エリザベート』のフランツ・ヨーゼフや、『ラブ・ネバー・ダイ』のラウルなど自制する役を演じることが多くはあるのですけどね(笑)」。
張りのある歌声と端正なルックスで貴公子的な存在だ。そのイメージを裏切ってみたくはならないのだろうか。「自分であまり決めないようにはしています。演出家によって自分の知らなかった部分を引き出してもらえる経験をしてきたので、得意なものだけで勝負しようとは思わないし、ないものを出そうとも思わない。目の前にある役に必死に向き合うことで、必然的に出るものが大事だと思っています。今回も新たにわきあがる感情を大切にしたいと思います」。
前回は、『ラブ・ネバー・ダイ』に出演するため、大阪と名古屋公演でフェルセンを演じることがかなわなかった。「アントワネット役の笹本玲奈ちゃんに『万里生君はクリスティーヌの元に行ってしまうのね』と言われて(笑)。今回は大阪でもしっかりと務めますので、楽しみにしていてください」。
大阪公演は、3月2日(火)から11日(木)まで、梅田芸術劇場メインホールにて。チケット発売中。
取材・文:米満ゆう子