まもなく開幕の〈20世紀の傑作バレエ〉公演、『アルルの女』上演をもってローラン・プティの作品に初めてのぞむ東京バレエ団が、ゲストのロベルト・ボッレを迎えてのリハーサルを公開、その後の記者懇親会で、ボッレとヒロイン役を演じる同団プリンシパル上野水香が公演への思いを語った。
「来日できてとても嬉しい」と笑顔のボッレ。ミラノ・スカラ座バレエ団のスターとして世界的に活躍するボッレだが、「プティとの出会いは19歳か20歳の頃、『シャブリエ・ダンス』を踊った時でした。プティは私を成長させ、進化させ、バレエという芸術の深みを追求させてくれた振付家。プティ作品における表現はとても難しいが、自分の芸術的成長を助けてくれた。全編を踊るのは2008年以来2度目ですが、この10年、私もいろいろな経験を経て成長した。ぜひ舞台を楽しみにしていただきたい」と話す。
ビゼーの音楽で踊られる『アルルの女』は、アルルの闘牛場で出会った女性に心を奪われるあまり徐々に正気を失っていく青年フレデリと、彼に献身的な愛を注ぐ婚約者ヴィヴェットの悲恋を描くプティの代表作だ(1974年初演)。リハーサルでは、次第に狂気にのみこまれていく青年の苦悩を鬼気迫る演技でみせたボッレ。その傍らには、報われない愛に苦しむヴィヴェット役の上野が常に寄り添う。
「プティ先生に習ったことは、とても重大なことでした」と上野。ボッレとは「初めて踊ったプティ作品が『シャブリエ・ダンス』、と共通点が。2年前のモスクワでのガラで初共演が叶い、それがプティの『アルルの女』の抜粋であったことも運命では、と思う。“悲しむ人”を表現するのはとても難しいことだけれど、悲しみも人生の中の美しいこと──そういう表現を、したいと思っています」。
当日はイリ・キリアン振付『小さな死』のリハーサルも公開。これも、今回が東京バレエ団初演だ。スタジオではプリンシパルの川島麻実子、柄本弾はじめ6組のカップルたちが、キリアンならではの複雑な振付、その独特の世界に真摯に取り組む様子が見られた。
「キリアンの振付は天才的」とボッレ。「今回の公演では、プティとともにイリ・キリアン、モーリス・ベジャールの作品を上演されますが、これは三大振付家の、非常にレベルの高い、美しさでも抜きん出た3作品」と、このプログラムに太鼓判を押す。
同時上演のベジャール作品は『春の祭典』。同団の代表的レパートリーのひとつであり、海外の劇場でも成功を収めてきた作品だけに、今回実現する新世代の主役ダンサーたちの活躍に、大いに期待したい。
公演は9月8日(金)から10日(日)、東京文化会館 大ホールにて。チケット発売中。
取材・文 加藤智子