左から福永泰晴、土屋茂昭

1983年の日本初演以来、驚異的なロングランを続ける劇団四季ミュージカル『キャッツ』。7年ぶり4度目となる福岡公演の開幕を前にキャナルシティ劇場で行われた舞台仕込み取材会で、舞台監督の福永泰晴氏と舞台美術家の土屋茂昭氏に、舞台装置やデザイン、『キャッツ』の世界観について話を聴いた。

『キャッツ』の舞台は都会のゴミ捨て場。客席に足を踏み入れた途端に広がる"キャッツ・ワールド"を築き上げる舞台美術は、本作の見どころのひとつ。猫の目線に合わせて実際の3~5倍の大きさで作られた2,500~3,000ものゴミのオブジェが、舞台だけでなく2階席まで劇場全体を埋め尽くし、まるで自分も猫になったかのような気分を体感できる。

「でも猫の目線を味わうためだけじゃなくて…」と語るのは土屋。「『ユタと不思議な仲間たち』の公演で東日本大震災の被災地を回った時、被災者の方ががれきの山から取り出した物の砂をはらっている光景を見て、ゴミは思い出の塊なんだということを強く意識するようになりました。だからここも、いろいろな思い出が集積した場所なんだと改めて思いますね」

ゴミのオブジェといえば、上演地ゆかりの"ご当地ゴミ"を探すのも劇場での楽しみのひとつ。今回も、「めんべい」や「チロリアン」のパッケージ、福岡ソフトバンクホークスの帽子など、24種類34点のご当地ゴミのオブジェが飾られる。そして、土屋がもうひとつのお楽しみを教えてくれた。「セットの中に、ひとつだけ四つ葉のクローバーが隠されています。場所が変わるので、来る度に見つけてくださいね。幸せのおすそわけです」

劇団四季によるキャナルシティ劇場での長期公演活動は、今回の『キャッツ』福岡公演をもって終了となる。前回、7年前の『キャッツ』福岡公演が本作の舞台監督としてのデビューだったという福永は、「今回、同作品でこの劇場に戻って来られたことに、なんだか運命的なものを感じています。(先月閉館した)東京・大井町のキャッツ・シアターと比べて、劇場公演は舞台と客席の距離が近いので、より臨場感があると思います。まるでアトラクションのようなこの空間を楽しみに来てほしいですね」と力強く語り、土屋も「劇場だと、2階からという、また違った視点からも楽しめます。そしてこのキャッツ・ワールドを構成するセットやオブジェも、できるだけ近くで細かいところまで見てほしいですね」と笑顔で締めくくった。

福岡公演は、7月27日(火)にキャナルシティ劇場にて開幕。チケットは発売中。