■そして男女逆転の『大奥』は再び映画に
連ドラ[有功・家光篇]の最終回で、お楽=捨蔵(窪田正孝)の娘・千代姫が次の将軍に決まり、家綱と名を改めるが、四代将軍・家綱の物語は原作でも短く、映像化はされていない。お玉=玉栄(田中聖)の娘・徳子も最終回で綱吉と名を改めていて、彼女がのちに五代将軍となる。その時代を描いているのが、現在公開中の映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』だ。綱吉は菅野美穂、相手役となる右衛門佐は、[有功・家光篇]の有功に続き、堺雅人が演じている。
映画[右衛門佐・綱吉篇]でも玉栄は出てくるが、再び仏門に入って桂昌院と名を改め、年齢も重ねているので、西田敏行が演じている。この桂昌院が、初めて右衛門佐を見たときに有功と見間違えてしまうというシーンが原作にもあり、そのために堺雅人が引き続きキャスティングされたのだと思う。ちなみに、[有功・家光篇]で玉栄に「将来、天下人の父になる相が出ている」と告げた隆光という僧侶も再び出てくるが、これはピースの又吉から堺正章に替わっている。
右衛門佐と綱吉の関係は、有功と家光の関係とはかなり違う。将軍としての孤独と世継ぎを産まなくてはいけないという重圧に関しては、むしろ家光よりも綱吉のほうが大きく、それが晩年の失政にもつながって、より切なさが増幅される描き方になっている。堺雅人の有功と右衛門佐の演じ分けも見どころだ。
登場人物としては、他にも柳沢吉保を尾野真千子、綱吉の正室・信平を宮藤官九郎、側室・お伝=伝兵衛を要潤が演じている。フジテレビのスーパー時代劇では、2005年10~12月期に放送された『大奥~華の乱~』がこの時代のもので、そこでは綱吉を谷原章介、右衛門佐を高岡早紀、桂昌院を江波杏子、柳沢吉保を北村一輝、綱吉の正室・信子を藤原紀香、側室・お伝を小池栄子が演じている。
ここから八代将軍・吉宗の時代に戻るには、まだ家宣と家継の時代がある。七代将軍・家継は幼くして亡くなってしまうので、原作の物語としても大奥を揺るがせた絵島生島事件が大部分を締める。この事件を中心に描かれたのが、2006年に公開された映画『大奥』だ。絵島を仲間由紀恵、生島を西島秀俊が演じている。男女逆転の『大奥』としては、せめて、六代将軍・家宣の時代は映像化して欲しいところだが、はたして実現するか……。家宣、左京(=月光院)、間部詮房の3人の関係は、男女の話としてもかなり見応えがある内容になりそう。そういう意味では映画より連ドラのほうが向いている気がするが、[有功・家光篇]の視聴率を考えると実現はむずかしいかも……。とりあえず、映像化の可能性は信じて待ってみよう。