番組は終了したがコンサートは好評継続中だ。8月31日(火)にサントリーホールで開催された「ららら♪クラシックコンサート」Vol.11。残念ながら公演には足を運べなかったのだけれど、インターネット配信を自宅で鑑賞した。「ソリストたちのカルテット~大御所ズ☆室内楽」の公演タイトルどおり、千住真理子(ヴァイオリン)、石田泰尚(ヴァイオリン)、飛澤浩人(ヴィオラ)、長谷川陽子(チェロ)という大御所メンバーによる、一日限りのスペシャル・カルテットのコンサート。ピアノに佐藤卓史。司会はいつものとおり、俳優の高橋克典とアナウンサーの金子奈緒。
冒頭、見どころを問われた千住の答えが、
「この4人がはたして(アンサンブルとして)まとまって弾けるか?」
たしかに! かなり珍しい一期一会の顔合わせだし、そもそも、そう答えた千住自身、カルテットを弾くなんて激レアだ(ソロの時は暗譜で弾くので、めったにお目にかかれないメガネ姿の千住も一見の価値)。
しかし1曲目のモーツァルトのディヴェルティメントから、4人の本気度がありありと伝わってくる。
おざなりの〝お仕事〟だったら、たぶんこんなに穏やかに調和したモーツァルトは出てこないはず。
一方で、ベートーヴェンの大フーガなどでは、それぞれの個性が激しくぶつかり合いながらひとつになるという、室内楽の醍醐味が聴けるのも、卓越した4人のソリストたちの演奏ならでは。
演奏曲目も本気度が高い。1楽章ずつ〝いいとこ取り〟した名曲の数々を一気に楽しめるプログラム。けれども選んだのは上述のモーツァルト、ベートーヴェンに加えて、シューマンのピアノ五重奏、チャイコフスキーの《アンダンテ・カンタービレ》とショスタコーヴィチの弦楽四重奏第8番と、まったくありがちではない。
フィナーレは一転、井上陽水《少年時代》。ピアノの前奏の「夏の思い出」から〝晩夏つながり〟の「♪夏が過ぎ 風あざみ」。うまい!(編曲:松岡あさひ)
インターネット配信は、緊急事態宣言による入場制限を受けてのフォロー策。コロナ禍の一日も早い終息は全世界の願いだが、こういう便利でうれしい副産物は大歓迎だ。きちんと凝ったカメラワークで音質も十分。映像だと演奏中の表情まで細かくはっきり見えるのもうれしい。会場で配布されたプログラムもPDFをダウンロードでちゃんと手に入る。かなり満足。アーカイブ配信は9月6日(月)23:59まで。なお、次回のららら♪クラシックコンサート Vol.12は12月1日(水)にサントリーホールにて上演。
(宮本明)
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