『RUST RAIN FISH』が、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて開幕した。初日公演の様子をレポートする。

2014年に初演された本作は、『ONLY SILVER FISH』『+GOLD FISH』に続いて西田大輔が脚本・演出を手がけるミステリーシリーズの第3弾。第二次世界大戦中の日本を舞台に、史実とファンタジーが混ざり合ったワンシチュエーション会話劇が展開される。今回は「Team Black」「Team White」の2チームWキャスト制が敷かれ、取材日は「Black」のキャストがステージに立った。

劇中では、本当の名前を知った時に過去を振り返ることができると言われている魚“オンリーシルバーフィッシュ”をめぐる物語が繰り広げられる。ある館に、冤罪にかけられた過去を持つ14人の男女が集まっていた。「この中に冤罪でない者がいる」「本当の犯罪者を見つけた者に魚の名前を教える」という館主の言葉を機に、一堂に会した14人はそれぞれ推理を始めるが──。

「Black」には西田が主宰するAND ENDLESSの劇団員(佐久間祐人、田中良子、村田洋二郎)をはじめ、2014年版の出演者(赤塚篤紀、杉山健一、塚本拓弥、萩野崇)が8人いるなど総じて“手がたい”印象だ。彼らに加えて、今回新たにキャスティングされたメンバーがフレッシュな風を吹き込む。特に凛とした人物像で作品を引き締める能條愛未、徹底したコメディリリーフぶりでシリアスな展開に緩急をもたらした宮下雄也(特に出オチ感満載の衣装と髪型に期待)の功績は大きい。

“オンリーシルバーフィッシュ”が揺れる、大きな水槽の前で絡み合っていくミステリアスな駆け引き。各自が振り返りたい過去は、やがて国家の命運を賭けた大きな“作戦”の記憶へと繋がる。その道筋をキャストとしても支える西田の躍動や、アウトローなたたずまいながら口数の多い谷口賢志、隠しきれない存在感で劇世界を支える堂本翔平、ピュアゆえの不器用さで観客を惹きつける松永有紗、一方で器用に立居振る舞う山口大地にも注目したい。

役者が変われば、作品はまるで変わる──。2014年版キャストが一人もいない「White」にはどんな世界が広がっているのか、もう一度劇場に足を運びたくなる鑑賞体験だった。上演時間は約170分(休憩含む2幕)。東京公演は10月3日(日)まで。その後、10月15日(金)~17日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールに巡演する。チケット販売中。

取材・文:岡山朋代