東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演中の『RUST RAIN FISH』において、「Team White」初日公演を鑑賞した。

2014年に初演された本作は、『ONLY SILVER FISH』『+GOLD FISH』に続いて西田大輔が脚本・演出を手がけるミステリーシリーズの第3弾。第二次世界大戦中の日本を舞台に、史実とファンタジーが混ざり合ったワンシチュエーション会話劇が展開される。今回は「Team Black」「Team White」の2チームWキャスト制が敷かれ、取材した9月27日は「White」の初日だった。

劇中では、本当の名前を知った時に過去を振り返ることができると言われている魚“オンリーシルバーフィッシュ”をめぐる物語が繰り広げられる。ある館に、冤罪にかけられた過去を持つ14人の男女が集まっていた。「この中に冤罪でない者がいる」「本当の罪人を見つけた者に魚の名前を教える」という館主の言葉を機に、一堂に会した14人はそれぞれ推理を始めるが──。

2014年版からの続投キャストが8人を占める「Black」に対して、「White」メンバーは今回から名を連ねた者ばかり。中でも、本作で初舞台を踏んだ歌手の藤澤ノリマサは序盤から持ち前のオペラ発声を轟かせ、客席を圧倒した。「Black」で西田が演じた、探偵然とした振る舞いが特徴的な「黒木1(仮)」役だったが、開幕に際して西田が寄せた「俳優が変われば、物語がこんなにも変わるのかと言うぐらい、生きている俳優たちが舞台上にいます」というコメントを体現するような存在感を発揮する。

出演者には天野はな、板倉武志、尾崎由香、鶏冠井孝介、瀬戸啓太、高橋良輔、高柳明音、竹井亮介、廣野凌大、松村龍之介、宮平安春、山本涼介、吉田ウーロン太(五十音順)も並び、重厚でシリアスな世界観の中にも緩急入り混じったユーモアを感じさせた。作品を象徴するかのような冒頭シーンでは、天野と高橋が静謐な魅力で観客を劇世界へと誘う。

オンリーシルバーフィッシュが幻想的に漂う、大きな水槽の前で絡み合っていくミステリアスな駆け引き。各自が振り返りたい過去は、やがて国家の命運を賭けた大きな“作戦”の記憶へと繋がる。伏線にまみれたその道筋をたった1回の鑑賞で理解するのは正直難しかったものの、前回の「Black」で結末を知ってから観る2度目にしてようやく輪郭がハッキリしてきた。本作は、趣向の異なる2チームWキャスト制の相乗効果と西田の歴史観を楽しみながら何度も考察を重ねて味わう極上のミステリーなのだ。

上演時間は約170分(休憩含む2幕)。東京公演は10月3日(日)まで。その後、10月15日(金)~17日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールに巡演する。チケット販売中。

取材・文:岡山朋代