2021年4月に1年2カ月ぶりに再会したラザレフ[日本フィル桂冠指揮者兼芸術顧問]は、2週間の隔離の後ようやくステージに立ち、「皆さんのことをずっと想っていました。会いたかった!」とスピーチ。涙をふく間もなくいつもの厳しいリハーサルに突入し、みるみるうちにあの重厚でまばゆいラザレフサウンドがよみがえった。サントリーホールでの2公演は忘れられない名演となった―それから半年、“緻密なる猛将”ラザレフが再び帰ってくる!!
10月16日(土)カルッツかわさきへ場所を移しての横浜定期演奏会、17日(日)相模原定期演奏会は、ラザレフが敬愛するブラームスと、その盟友ドヴォルジャークの作品を取り上げる。素朴で内省的な響きが共通する2人の作曲家の作品に、豪快な指揮で新たな息吹が注ぎ込まれるだろう。ソリストは、若き巨匠の風格をまとうチェリスト・宮田大。名演誕生の予感がしてならない。カルッツかわさきは2017年に誕生した川崎市の新しい複合施設。ホールは2000席あり、ダイレクトに届く良い音響を備えている。ラザレフとの相性も楽しみだ。
10月22日(金)、23日(土)サントリーホールでの東京定期演奏会は、大好評の日本フィル&ラザレフによるショスタコーヴィチ。今回はお客様からの要望も多かった交響曲第10番を満を持して取り上げる。かのカラヤンがレパートリーとした唯一のショスタコーヴィチ作品であり、純粋なオーケストラ作品としての評価は非常に高く、20世紀が産んだ傑作中の傑作といってよいだろう。ラザレフ自身もこの10番を演奏できるなら、また苦難の来日となろうとも必ず来る、と約束するほど熱が入っている。前半にはショスタコーヴィチの師(グラズノフ)の師であるリムスキー=コルサコフの音楽を取り上げる。《金鶏》はオーケストレーションの大家ならではの極彩色の絢爛豪華な音楽が特徴で、15分あまりのピアノ協奏曲は、少し「和」のテイストすら感じられる独特な雰囲気を纏った佳作。卓越したテクニックと音色の豊かさが魅力のピアニスト福間洸太朗にまさにうってつけの秘曲だ。これを聴き逃すわけにはいかないだろう。