『ライチ☆光クラブ』、『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』、『帝一の國』、『トリガール!』など、昨年から話題の映画に出演し、ネクストブレーカーの筆頭に数えられる間宮祥太朗。日本人離れした圧倒的な美貌に加え、若干24歳で“カメレオン俳優”の異名を持ち、作品ごとに豹変する姿は他の追随を許さない。そんな間宮が、かつて福岡で発生し、被告である家族4人全員に死刑判決が下った異例の事件をモチーフにした『全員死刑』で、家族や彼女のために実行犯となって殺人を繰り返す次男タカノリ役で映画初主演を務めた。「やってよかった」と充実した表情を見せる間宮が、本作に込めた思いや役者としての今後の展望などを語った。
-映画初主演作がかなりヘビーな作品になりましたが、オファーを受けたときの率直なお気持ちは?
最初は、死刑囚になった人を基にした作品で主演を務めることや、その映画を背負って自分が立っていられるのかというところで迷いました。だから、二つ返事で「やりましょう」ということではなく、判断をしっかりしなければいけないと考え、まず(小林勇貴)監督に会っていろいろな話をさせていただきました。
-その中で、何が決定打となってこの役を引き受けたのですか。
監督と事件との距離感です。監督が「絶対に許せない」という信念のもとで映画にするとしたら、僕はその気持ちに付いていく自信がなかったし、逆に、この事件を基にする必要があるのかどうか分からないような面白さだけで映画化しようとしているなら不安でした。でも、距離感が絶妙で、事件に対する考察もきちんと持っていらっしゃいました。あとは理屈ではなく、話をしている時の監督の姿を見て、信頼できるし、一緒に仕事がしたいと思いました。
-これまで携わってきた作品とは違うプレッシャーがありましたか。
ベースが実際に起きた殺人事件なので、露骨に嫌悪感を示す人は出てくると思います。そういう作品だからこそ、自分が納得して胸を張り、タカノリを任せてもらってよかったと思えるところまで持って行かないといけないと思いました。
-その目標は達成できましたか。
はい。できましたし、やってよかったと思います。
-役づくりでこだわった部分を教えてください。
人殺しのシーンは残虐で残酷な描写もあるけど、タカノリ自身が相手に憎しみを持っていたり、快楽のためにやったりしているわけではないし、強盗も自分が遊ぶお金が欲しいわけではなく、あくまでも一家の借金の返済にあてようとしているんです。だから、家族や自分がやらなきゃ危険な目にさらされる彼女のために“義務感のある仕事として人を殺す”という、見ている人が少し不思議な感覚に陥るような感じを狙って演じました。
-殺人犯役を演じると精神的苦痛を感じる役者も多いですが、間宮さんはいかがでしたか。
僕は大丈夫でした。今回は超タイトスケジュールでプライベートは寝るだけだったので、撮影期間中は肉体的にも精神的にもタカノリにどっぷり漬かっていました。そのうちに僕本来の日常を忘れて、タカノリが日常になっていくんですが、やっていることは非日常だから思考がトロンとしてきて…。でも、逆にそれが撮影ではいい作用として働いたと思います。
-金髪オールバックに入れ墨姿で、凶暴性も人間味も持ち合わせる殺人犯に見事に成り切っており、“カメレオン俳優”と呼ばれていることに納得しましたが、間宮さんの演技の原点はどこにあるのでしょうか。
そんな風に言われているんですか? ありがとうございます(笑)。演技に関しては舞台での経験が反映していると思います。役者の表情が見えにくい客席の一番後ろのお客さんにも届けなければいけないので、そこで培ったものは役者として大きな糧になっています。
-これまでの役者人生において影響を受けた方はいますか。
劇団「柿喰う客」の玉置玲央さん(2013年の舞台「飛龍伝」で共演)に会って、役者としての観念が180度変わりました。役者を始めたばかりの頃は、他の役者に負けたくなかったし、とにかく自分が前に出ていかなければいけないという強迫観念もあり、一緒に作品を作っているのに、共演者を仲間だとは思っていませんでした。例えば、2人のシーンでも、自分の役にしか向き合わず、相手のことを全く気にしないで「僕一人でこのシーンを構築すればいい」と考えていました。それが、玉置さんの話を聞き、立ち居振る舞いを見ているうちに、共に演じるという“共演”の意味が分かるようになりました。
-今後はどのような役者を目指されますか。
自分自身や出演した作品に興味を持ってもらいたいので、常に期待以上のことをしなければいけないと考えています。あとは、20~30年先の話ですが、立っている姿だけで見る人の想像力をかき立てるような役者になりたいです。そのために、今は体や頭、心に歴史をどんどん刻んでいきたいです。
(取材・文・写真/錦怜那)