渡辺大知

童話に新しい解釈を与え、大人向けファンタジーとして創り上げたミュージカル『INTO THE WOODS』が2022年1月に日生劇場、2月に梅田芸術劇場メインホールで開幕する。

1986年に発表され、翌年ブロードウェイで初演されたミュージカルで、これまでに世界各国で上演されてきた本作。日本でも複数の演出家によって舞台化されてきたほか、2014年にはロブ・マーシャルが監督を務め、ディズニーにより実写映画化(日本公開は15年)されている。

魔女に呪いをかけられたパン屋(夫)を演じるのは、渡辺大知。音楽活動と並行して、俳優としても活動を広げ、映像のみならず、舞台『ねじまき鳥クロニクル』(2020)で主演するなどしている。

すでに本作の脚本の第一稿を読んだという渡辺に、その印象を尋ねると、「知っている寓話の裏側を見るような展開かと思っていたら、そうではなくて。寓話の登場人物たちが、いち人間になっていくというか。自分が演じるパン屋という役どころが、自分の意思とは反して、いろいろな登場人物をこのストーリーに迷い込ませてしまっているような感じもしました」と語る。

真面目な性格なのだろう。演出の熊林弘高との会話の中で『ジャックと豆の木』のジャックを“大人”にしようと思っていると聞いたことを明かした上で、「自分の思い描いたストーリーではちょっと臨めないなと(笑)。登場人物をただのキャラクターとして理解するのではなくて、もっと物語の構造を考える必要がありそうです」と話した。

本作の楽曲を担うのは、『ウエスト・サイド物語』や『スウィーニー・トッド』などを手掛け、“難解”な曲で知られるスティーヴン・ソンドハイム。渡辺に楽曲の印象を尋ねると、「難解って言われる人なんですか」と切り返しつつ、「なぜこういうメロディになっているのか。そのメロディが気持ちいいのか、気持ち悪いのかも分からない、不可思議さは感じました」と振り返る。そして、「正直歌いにくいと思ったけど、それが楽しかったです」とも。

演劇作品は本作で4作目。「僕が今までの少ない経験で思う、舞台の素晴らしさは、明確なゴールがない中で、みんなで土ならしから、家を建てるところまでやりきる感覚があること。完成図がすぐに思いつくようなものを再現するのは、あまり楽しくないので、どうなるか想像がつかない方が、ワクワクします」という。

観客へのメッセージを求めると、渡辺は「人との関係性が失われている時代だからこそ、いろいろなものを感じる時間や刺激を大切にしたいと思っています。舞台を見に来てくれた人にとって、この舞台が新しいものとの出会いの場になれば嬉しいです」と述べた。

取材・文:五月女菜穂