アップル体ソニーの構図は携帯オーディオの戦いを思い起こさせる

コロナ禍で盛り上がった市場のひとつにヘッドホン・イヤホン市場がある。マイクを内蔵するヘッドセットとして使える製品は特に伸びた。昨年4月以降、テレワークが一般的になるにつれ販売が拡大。ヘッドホン・イヤホン市場全体を活気づけた。品薄の影響もあり、今年に入ると勢いは続かず、昨年販売が伸びた4月以降は前年割れ基調が続いていた。しかし、売れ筋のAir Podsシリーズの販売が安定してくると、販売金額から前年を上回り始めた。11月は販売個数こそ97.5%と前年を下回ったが、販売金額は109.4%と2桁増目前まで販売が伸びた。平均単価も7000円台を回復、活況が戻ってきそうな勢いだ。

ヘッドホン・イヤホン市場の注目はワイヤレスの製品だ。特に左右のユニットもワイヤレスになっている完全ワイヤレスイヤホンが人気だ。昨年の11月時点ではワイヤレス製品の販売個数比率は43.8%だったが、この11月では48.2%と市場の半分近くまで増えた。そのうち、完全ワイヤレスイヤホンは11月現在で59.2%を占め、ワイヤレス製品の主流になった。量販店の売り場に赴けば、数多くの種類が並び、どれを選べばいいかわからないほどだ。また最近の流行はノイズキャンセル機能付きの製品。搭載モデルは価格が高いため、比率はまだ小さいが、それでもワイヤレスイヤホンの35.3%を占めている。

メーカー別販売個数シェアでは安定的に1位と2位でトップを争っていたのがソニーとエレコムだ。ソニーは高価格帯のワイヤレスイヤホンが得意で、エレコムは手ごろな有線モデルで販売個数を稼いでいる。11月ではソニーが13.5%でトップだった。2位はアップルで12.6%。品薄の影響で一時大きくシェアを落としていたが、10月以降戻ってきた。3位がオーディオテクニカで11.7%、4位が僅差で11.4%のエレコムだ。主にこの4社で上位を占め、シェア争いを繰り広げている。

11月の製品別ランキングでは、1位から3位までをアップルが占めた。トップがAirPod Pro、2位がAirPods、3位が有線のEarPdsだ。4位に入ったのがソニーのWF-1000XM4。ノイズキャンセリング機能を搭載し、アップルのAir Pods Proとシェアを争っている。以下10位までがこの2社とパナソニック、ヤマハの4社で占めている。15位にはAfterShokzの骨伝導ワイヤレスイヤホンが入っているのも注目だ。上位に占めるアップルとソニーのランキングを見ると、携帯オーディオでiPodとウォークマンが繰り広げた戦いを思い出す。カテゴリーを変えてもオーディオというフィールドで再び争っている形だ。主戦場は完全ワイヤレスイヤホン市場だ。市場構造も参入企業が激増した携帯オーディオ全盛期に似た形になってきた。しばらくはこのホットな状態が続きそうだ。(BCN・道越一郎)