Mac miniの登場とAIの進展で乱高下するアップルのシェア

デスクトップPC市場が大きく動いている。この3月、売れ筋だったアップルのMac mini M4(2024年モデル)の販売が失速。市場全体も前年割れを喫した。これによって過半を占めていたコンパクトタイプも構成比が大きく下がり、モニター一体型の構成比が再び過半を占めている状況だ。いわゆるAI需要と、Windows10のサポート終了に伴う動きが交錯している。全国2400の家電量販店やネットショップの実売を集計する、BCNランキングで明らかになった。 デスクトップの市場構造を大きく塗り替えたのは、24年11月にアップルが発売したMac mini M4だ。それまでのデスクトップPC市場は、一般ユーザー向けのモニター一体型が6割前後を占めていた。しかし、Mac miniが登場すると人気が爆発。コンパクトタイプの構成比が7割近くまで上昇、逆転した。さらに、10月には11.7%だったアップルのシェアも、翌11月には51.2%まで急上昇した。要因は新製品のコストパフォーマンスの良さ。CPUを最新のM4系チップに刷新し、エントリーモデルのメモリー容量を8GBから16GBに増量しつつも、価格は税抜き8万円台に据え置いたことが大きかった。

他にも一辺約13cmと手のひらサイズまで小型化したり、前面にUSB-Cポートを配置するなどで使い勝手も向上。「小さなサイズにかつてのMac Studioに迫る性能を詰め込んだ」という評価もあった。Mac mini M4(メモリー16GB/SSD256GBモデル)は、発売以降9カ月連続でデスクトップPCの販売台数トップを記録した。8月から10月まではWindows10のサポート終了に伴うWindows PCの販売が拡大。首位の座を明け渡したものの、11月には奪還。この2月まで再び首位を走り続けてきた。ところがこの3月、販売台数ランキングは12位まで下がり、アップルのシェアも10.4%の5位まで急降下した。

外部ネットワークに接続せず、手持ちのPCだけでAI環境を構築する、いわゆる「ローカルAI」では「Mac mini M4は最強の選択肢」と言われるほどだ。そもそもMac mini M4のメモリーを、エントリーモデルでも16GBまで増量したのは、Apple独自AI「Apple Intelligence」をPC単体で快適に動かすための最低要件が16GBだったことから。AI用途に焦点を合わせた戦略だった。さらに、いわゆる「ユニファイドメモリー」と呼ばれる、GPUがメインメモリーを直接参照できる構造であるため、Windows機よりも格安で「大規模画像生成」や「LLM(大規模言語モデル)」の推論を動かすことができる点も人気化した要因だ。省電力性と静音性に優れ、24時間稼働させても電気代が安く静か。自宅でAIエージェントを常時稼働させる用途などで、引っ張りだこの状態になった。この3月は、こうしたAI需要拡大に在庫が追い付かず、シェアが急落したものと思われる。また、そろそろ次世代のM5チップ搭載モデルが発売されるとの噂もあり、一部ではアップルがその準備に入ったのではとの推測も流れている。

デスクトップ市場全体に与えたMac mini M4の影響は大きい。24年10月まで前年割れで推移していた市場は、同年11月以降、前年比が急拡大。これにWindows10のサポート終了特需が加わった。25年8月から10月にかけては前年比で倍増から3倍増近くの販売台数を叩き出した。一方、メモリーやSSDなどの価格高騰に伴う、デスクトップPCの単価上昇が心配されているが、今のところ大きな変化はない。3月は2月比で単価が跳ね上がっているものの、これは主にMac miniが払底した影響だ。しかし、今後じりじりと価格上昇の波は押し寄せてくるものと思われる。Mac miniも新モデルでは値上げされる可能性が高そうだ。AIの急激な進展が、PC市場のさまざまな部分に影響し始めている。(BCN・道越一郎)