マザーボード市場でGIGABYTEの販売台数シェアが回復。要因は?
国内マザーボード市場で、今年創業40周年を迎えるGIGABYTEが勢いを取り戻している。全国の主要家電量販店・ネットショップの実売データを集計した「BCNランキング」によると、マザーボード市場におけるGIGABYTEの2026年3月のメーカー別販売台数シェアは2023年後半と比べて約5倍に上昇しており、市場関係者の間でも復活の動きとして注目を集めている。なぜGIGABYTEは短期間でシェアを回復できたのか。販売チャネルの変化や製品ラインアップ、ブランド戦略を中心に、その要因を分析する。
マザーボード市場の回復にあわせてシェア拡大
GIGABYTEは1986年に台湾で創業したPCパーツメーカーで、マザーボードを中核事業として成長し、グラフィックスカードやノートPC、サーバー機器などへと事業領域を広げながらも、自作PC市場においては長年にわたり主要プレイヤーの一角を担っている。
マザーボード分野においては、近年、ローカル環境でのLLMトレーニングに対応するAI TOPシリーズや、デザイン性と機能性を兼ね備えたAERO X3D WOODシリーズを展開。さらに、独自技術としてCPU性能を大幅に向上させるX3D Turbo Mode、組み立てしやすさを追求したEZ-Latch設計、スタイリッシュな背面コネクタ設計のProject Stealthシリーズなど、業界をリードする先進的な設計を実現している。
直近はクラウドからエッジまでを網羅する包括的なAIコンピューティングソリューションも提供する企業としても評価を高めており、今年は創業40周年という節目を迎えた。「BCNランキング」でも、同社は2000年代前半にマザーボードの販売台数シェアで3度の年間トップに立っており、コンシューマ市場でも実績と歴史をもつメーカーだ。
近年のマザーボード市場を振り返ると、コロナ禍における特需で大きく成長したが、その後は反動に伴う調整局面が続いていた。2024年後半からはCPUやGPUの新世代製品の投入などの影響で、市場は徐々に回復基調にあり、GIGABYTEはその波に乗る形でシェアをじわじわと上げているのだ。
実店舗販売の強化が奏功 ブランド力向上で売上拡大
シェア回復につながった理由としては、4つの要因が挙げられるだろう。
まずは、実店舗販売の強化だ。もともと同社はECに強かったが、ゲーミング需要の高まりを受け、実店舗、特にPCショップにおける展開を強化。ECも継続して好調で、リアルとオンライン、双方への注力がシェア回復につながった。
また、自作PCは複数のパーツを同一メーカーでセット売りする手法がよくとられているが、GIGABYTEはこうしたトータル提案の方法にも注力した。グラフィックボードなどと組み合わせたときの導入のしやすさや価格設定にこだわり、ユーザーに選ばれやすいフックを作っている。
ユーザーへのアプローチは「体験」という形でも行っている。店頭イベントやコミュニティで顧客との接点を強化し、ブランド力の向上を図った。これは実店舗だけでなく、ECにおける売上拡大にもポジティブな影響を与えたようだ。
各分野に特化したアプローチにも積極的だ。eスポーツ分野ではスポンサー活動や東京ゲームショウ出展などでブランドイメージの拡散に努め、クリエイティブやAI領域におけるプロフェッショナルユーザーに対してもマーケティングを強化。異業種コラボレーションによる新規ターゲット層の開拓にも力を入れている。
エントリーからハイエンドまで幅広いモデルで支持を集める
2026年3月に販売されたGIGABYTE製品で特に支持を集めたのが、「B550 GAMING X V2(rev. 1.3)」と「A520M K V2(rev. 1.0)」だ。
「B550 GAMING X V2」は税別平均単価1万1587円のミドルクラス帯に位置するモデル、A520M K V2は同5472円とお手頃価格なエントリーモデルで、初中級者を中心に高い人気を誇っている。
ただ、安いモデルだけ売れているというわけではない。平均単価が3万円を超える「X870E A ELITE WIFI7」が同社売れ筋の3位に入るなど、ハイエンドクラスに位置づけられるモデルも支持を獲得している。
近年はPCパーツ全体で価格上昇が続いており、「価格に見合った価値を提供できるか」が以前にもまして重要となりつつある。どの価格帯であっても価格に対する納得感がなければ、メーカー別シェアはここまで回復しなかっただろう。
40周年でさらなる飛躍 AORUSの成長がカギ
前述した通り、GIGABYTEは2026年に創業40周年のメモリアルイヤーを迎えている。同社はこれをさらなる飛躍のチャンスと見て、ユーザー拡大のための施策や方針を打ち出している。
消費者への分かりやすいメリットになりそうなのが、メーカー製品保証期間の延長だ。従来は「購入後2年保証」という期間を設定していたが、2025年5月1日以降の購入分からほぼ全現行製品で「購入後3年保証」に延長する。
エントリー層とハイエンド層のそれぞれに刺さる取り組みも見逃せない。
まずエントリー層に向けては、組み立てやすさを重視した「DIYフレンドリー設計」をさらに浸透させていく。近年、同社は工具不要でパーツを着脱できる機構やCPUを装着せずにBIOS更新が可能な機能などを採用しており、さらに訴求していく方針だ。
ハイエンド層に向けては、プレミアムゲーミングブランド「AORUS(オーラス)」を再強化していく。2014年に誕生した同ブランドはハイパフォーマンスや洗練されたデザインを売りにしていたが、競合も高性能モデルに力を入れるなかでポジショニングに苦労してきた。しかし、現在はAIを活用した性能最適化や高速メモリ対応など最先端技術を積極的に取り込み、高付加価値モデルとして再評価されつつある。
実際、2026年3月の同社販売台数ランキングでもAMD Ryzen X3Dプロセッサ向けに最適化された「X3D Turbo Mode 2.0」(AI搭載BIOS機能)を搭載する「B850 AORUS ELITE WIFI7」などが上位にランクインしている。
このほか、技術革新を象徴するモデルとしては、2026年3月26日発売の業界に先駆けてCQ-DIMM技術を採用した「Z890 AORUS ELITE DUO X」が例に挙げられる。ハイスペックモデルながら5万円台という手の届く価格帯を実現しており、注目度は高い。
AORUSは使いやすさにも重点を置いており、プレミアムブランドでありながら、初心者でも性能を引き出しやすいのも特徴。エントリー向けに取り組んでいるDIYフレンドリー設計に共通する部分もあり、他社製品に対する差別化ポイントになっている。40周年を機にさらなるシェア拡大を狙う同社にとって、AORUSの飛躍は重要度の高いミッションとなりそうだ。
ゲーミングに加え、AI時代に需要が伸びている高演算性能を備えたエッジ向け製品のラインアップを拡充していることもポジティブな要因だ。複数のGPUを搭載できる「AI TOP」シリーズから、現場のAI処理に特化した小型ユニット「ATOMシリーズ」まで、幅広いラインアップを提供することで、研究者や企業などの新しい層も開拓しつつある。
同社の直近のシェア回復は単純な価格戦略ではなく、製品ラインアップ・販売チャネル・ブランド戦略が複合的に絡み合ったものであるため、今後も勢いをキープできる可能性は十分にある。それぞれのターゲットに対して明確な価値提案を行えていることは、後塵を拝してきた競合と渡り合う有効な材料となりそうだ。(OFFICE BIKKURA・小倉 笑助)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。







