“ダンス×演劇×J-POP”を掛け合わせ、セリフを使わず身体表現をメインに物語を立ち上げるダンスエンターテインメント集団・梅棒。彼らの最新作、13th“RE”WORK『風桶』が東京・本多劇場にて現在上演中だ。
全公演満員札止めの好評を博したという梅棒 5th WORK sideB『風桶』(2016年)を再演する本作。行方不明の兄を捜す科学者の弟が現代と江戸時代にタイムスリップし、大ファンのバンド「夜桜前線」を巻き込みながら、気弱な傘売りや見習い芸者など個性豊かな町人たちと繰り広げる騒動が描かれる。兄弟やバンド、町人の間に生まれる絆の行方はいかに──。
ゲネプロは、科学者の弟・吉田テスタロッサが観客に「兄を捜すタイムトラベルがてら、未来から令和の人気バンド“夜桜前線”のライブに参戦しに来た」と面白おかしく設定を伝える前説スタイルで始まった。弟は3択に挙手させるなど客席を巧みに劇世界へと誘いながら、舞台はいつしか300年前の江戸に。そこには街の荒くれ者と結託し、よからぬ策略を巡らす兄の姿が。
江戸の民、未来の科学者、令和のバンドメンバーに共通するのは、時空を超えて出会えた喜びと別れの悲しさ。これらが舞台上をほとばしる圧倒的なエネルギーとなって、ストーリーは疾走感たっぷりに進んでいった。言葉を用いないにもかかわらず、全キャラクターの感情が伝わってくる演出やパフォーマンスに手に汗握り、心が揺さぶられるひと幕も。
作・総合演出を務める伊藤今人は、開幕に際して「演劇を志すものにとって“本多劇場”がどういう場所か。我々がこの聖地にふさわしいと考えた作品がこの『風桶』でした」「梅棒らしさはそのままに、この作品だからこそ感じられる“演劇”が詰まった自信作です」とコメントを寄せる。この空間でしか味わえないライブ感に満ちたステージは、まさに演劇的。初進出の本多劇場で幕を開けたグレードアップ版『風桶』で、梅棒の門出を応援してみては。
キャストには梅棒メンバーの梅澤裕介、鶴野輝一(Wキャスト)、遠山晶司、塩野拓矢、天野一輝、野田裕貴、多和田任益に加えて、渡辺みり愛、松浦司、まりゑ、松浦景子、YOU、正安寺悠造、長谷川敬タ、eat、Naoki、hirokoboogie、ひこひこ(Wキャスト)が名を連ねている。
東京公演は12月30日(木)まで。その後、2022年1月7日(金)~10日(月・祝)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、1月20日(木)・21日(金)に愛知・名古屋市芸術創造センターと巡演する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代