京都・南座の新春恒例「初笑い! 松竹新喜劇 新春お年玉公演」が1月2日(日)から開幕するのを前に取材会が行われ、渋谷天外、藤山扇治郎、ゲストの久本雅美ら出演者7名が登壇した。「お正月なので衣装代も奮発して、時代劇の“まげもの”2本をパーンと打ち上げます!」と威勢のいい天外に、久本も「お芝居観に来たなという贅沢感が味わえる」と続き、早くも一致団結のムードが漂う。出演者が五・七・五のカルタで意気込みを語るなど、お正月らしい趣向で盛り上げた。
一本目は「藤山寛美二十快笑」にも選出される『お種と仙太郎』。嫁姑問題を描いた人情喜劇を扇治郎と久本の共演で贈る。扇治郎は「お風呂場とかでよく、久本姉さんこれやりはったらいいのにとかひとりで考えるんです。その5本の候補のうち、1本がこれでした」とドンピシャの配役に喜ぶ。観客には自粛疲れを思いやり「来年は劇場に足を運んでもらって。僕と久本さんでやる人情喜劇でホロリと沁みていただけたら嬉しいなと思います」
久本は「扇ちゃんがお風呂場でも私のことを考えてくれてたなんて。気色悪いけど、嬉しいです(笑)」と冗談めかしつつ、姑役は藤山寛美をはじめ代々男優が演じてきただけに「緊張します」と続ける。「男性が女性を演じる時点でひとつ面白さが加わっているので、それを女性が演じるとなると本当に難しいお役やと思います。ほんまはええ家族なんやなと思ってもらえるように、可愛げがある意地悪ばあさんでありたい」と語る。
二本目は松竹新喜劇随一の爆笑喜劇『お祭り提灯』。このたび、39年ぶりに曽我廼家の名跡を継承した曽我廼家一蝶、いろは、桃太郎ら若手が大役に挑む意欲作だ。提灯屋、徳兵衛役の一蝶は先輩らに「熱量だけは負けたくない」と気合十分。扇治郎を中心に「劇団の新たな屋台骨となれるよう精進したい」とやる気をみなぎらせる。11月の襲名披露公演では観客の拍手が胸に沁みたと言ういろはは1『お種と仙太郎』で嫁のお種、『お祭り提灯』で徳兵衛の妹役に挑む。「お種は素直で謙虚な娘だと思うので、私も初心を忘れず素直な気持ちで成長できるように頑張ります」。桃太郎は、藤山寛美の十八番でもある提灯屋の丁稚役に抜擢され「恐ろしさに身震いしました」と驚嘆しながらも、「共演の方々の力を借りつつ、いい意味で期待を裏切りたい」と覇気を見せた。
取材会では、カルタの五・七・五で「なんでかな おちょやん出たのに 気づかれず」と朝ドラ『おちょやん』出演という今年のハイライトをユーモアたっぷりに振り返ったのは渋谷天笑。同じく次代を担う若手の一員として「南座の公演を頑張って、街で声をかけられる人間になりたい」と活躍を誓う。仲間の援護も頼もしい扇治郎は、来年は寅年で年男。「松竹新喜劇をまた観たいと思っていただけるよう、お客様のハートに噛みついて離さぬよう精進したい」と決意を語った。
公演は1月2日(日)から10日(月・祝)まで南座にて。チケット発売中。
取材・文:石橋法子