坂東玉三郎が2月に博多座で上演となる「坂東玉三郎 特別舞踊公演」に向けて、都内で取材会を開催した。

玉三郎にとっては2017年9月に鼓童と共に出演した『幽玄』以来、約4年半ぶりの博多座。近松門左衛門作の『日本振袖始』で八岐大蛇(やまたのおろち)が化身した岩長姫を演じるほか、唐の時代の宮廷の新年の儀式を題材にした能を歌舞伎舞踊化した『鶴亀』が上演される。

博多座について「大きな劇場だからこそ、広々とした雰囲気が出ると思う」と語る玉三郎。九州最大級の劇場として1999年に開館し、玉三郎は2003年に『壇浦兜軍記』で初めて同劇場の舞台に立ち、それから18年になるが「〇〇座という形で“座”があるというのは大きな意味があると思います。70~80年代の頃は地方を巡業で回っても、1日か2日しかいられなかったけど、博多座ができて腰を落ち着けて興行ができるようになった」と語る。

玉三郎の公演では、口上も大きな見どころのひとつ。打掛などの豪華な衣裳が披露され、それについて玉三郎自身が解説まで行う。口上のための琳派風の屏風を新たに制作。衣裳は昨年1月の松竹座公演から六代目中村歌右衛門が『廓文章』(吉田屋の夕霧)で着用していた枯柳に雪持に鷺の意匠の打掛を披露していたが「もう20~30年経っているので、他の舞踊にも使えるようにと思い立って、雪持と柳を細かくして雪を降らせて、流れ水を華やかにしたものを作っている」とのこと。これに加えて、新たな趣向を凝らす予定だ。

『日本振袖始』には、中村芝翫の息子である橋之助、福之助、歌之助の3兄弟も出演。以前から玉三郎は『桜姫東文章』や『川連法眼館の場』(四の切)などの稽古をつけていたという縁もあって、昨年に入ってからの公演で共演してきた。「大変仲が良くて、稽古中にセリフや動きのことをお話して『あとで3人で話し合って復習しなさい』と言ったらちゃんとやっていて。すごく良い関係なので私も楽です」と顔をほころばせていた。

また、先日亡くなった中村吉右衛門さんとの思い出に話が及ぶと「帝劇でお兄さん(当時・六代目市川染五郎、現・松本白鴎)と一緒に『関の扉(積恋雪関扉)』を2~3年続けてやらせてもらったのが思い出としては深いです」と語り「堅実にご自分のおうちのものをやっていらしたことに関して、誠実で尊敬に値する方だったと思います」と故人を偲んだ。

改めて2月に公演に向けて「現実に苦しいことはあると思いますが、そういう現実を忘れていただける時間を過ごしていただけるよう最大を尽くしてまいります。『日本振袖始』という、博多座にぴったりのものを持ってまいりますので、ぜひご来場いただければ」と意気込んだ。

「坂東玉三郎 特別舞踊公演」は2月2日(水)~19日(土)博多座にて上演。チケットは発売中。