楽曲はアーティスト名/アルバム名/曲名で検索がかけられるほかに、「アーティストBest」「テーマ別Best」から選ぶことも可能だ。アーティストBestはその名の通り、ロックからポップスまで幅広いジャンルのアーティストをレコメンド。テーマ別Bestでは、「ジョギングソング」「泣けるうた」など、さまざまなテーマのプレイリストが用意されている。

鬼頭: 海外サービスとの違いは、音楽を聞く際の“文脈”を提案していること。例えば、Spotifyは「さあどうぞ、自由に検索してください」という形式なので、何を聞くべきか迷ってしまうこともあるでしょう。そこでレコチョクBestでは、当社が長年蓄積してきた「日本人のお客様がどういう文脈で音楽を聞いてきたか」というデータを元に、馴染みのある形で並べたプレイリストを用意しています。

安部: レコチョクBestのコンセプトは「思い出が再生する」というもので、これはプレイリストを考える際も意識していますね。プレイリストは、懐かしさを喚起させる楽曲に触れると同時に、それまで知らなかったアーティストにも出会ってほしいという意図があります。また、ぜひ試してほしいのが「ダイジェスト再生」。プレイリストやアーティストごとにダイジェスト再生のボタンを押すと、一覧に入っている楽曲がいいところどりで再生されていきます。聞いたことのないアルバムや、名前だけ知っているアーティストで試していただいて、「この曲だけ知っているな」という風に、思い出を掘り起こしてもらいたいですね。
 

川人: 「関連アーティスト」を表示しているのもポイントですね。そのアーティストとコラボレーションをしている、親族であるなどの繋がりだけではなく、「メガネをかけている」という括りで紹介されたりもするんです (笑)。こういった繋がりで、聞いたことのない楽曲に触れてほしいですね。

鬼頭: 海外には「ジャンル」というものが根付いていますが、日本では「J-POP」という大きな括りの中に、いろんなものがありますよね。ぜんぜんジャンルが違う楽曲でも、同じクールにやっていたドラマの主題歌だと聞きたくなる。どんな繋がりだと聞きたくなるかを考えながら、プレイリストを編成しています。
今後の展望としては、お客様がいつどのくらい聞いたかのデータを元に、発売当時は話題にならなかったものの長く愛されている曲たちを「ロングヒットチャート」として表示できるようにする、なども考えています。

レコチョクBestは、単に音楽を「聞く」だけではなく、「楽しむ」ことを目的とするサービスだ。そこで気になるのはSNSとの連動。現在は自分の聞いている楽曲をtwitter、facebook、mixiに投稿する機能が用意されているが、今後、SNSとの連携はどのように進化していくのか?

鬼頭: SNSとの連携はとても重要ですが、ありがた迷惑のサービスにならないように慎重に検討しています。例えば、無理やりfacebookと連携してプレイリストを公開させる、なんてことはしません。日本のSNSユーザーのニーズに合ったサービスを構想したいと思います。

川人: 自分が聞いた曲を、自分の知っている人に知ってもらいたい。または、私の知っているあの人もこの曲を聞いている――という文脈の繋がりを意識して機能を追加していきたいと考えています。twitterなどの繋がりを前提としたものですね。「年齢と性別は同じだけど、どこの誰かが分からない人」ではなく、具体的に誰が聞いているのかを思い浮かぶ機能をつけていきたい。それが日本的でハイコンテキストなサービスだと思うんです。

レコチョクBestの特徴のひとつは音質の良さだ。ストリーミングする際に128 kbpsと320 kbpsのいずれかを選ぶことができる。320 kbpsといえば、iTunes storeで購入した楽曲(256kbps)よりも高く、現行のストリーミングサービスでは最高レベルにある。鬼頭さんによると、「320kbpsだと特にハイハット等の高い音が格段にクリアに聞こえる」という。なぜ、ここまでの高音質にこだわったのだろうか。

安部: 単曲販売でも128kbpsと320kbpsを選択して購入できるので、聞き放題でも音質をキープしたいという思いがあったんです。

鬼頭: 当社は着うたのイメージが強いために、ネットでは「どうせ、音質が悪いんでしょ?」という意見が多くて(笑)。そうではないことをアピールしていきたいし、音が悪いことで「音楽って、なんだかな」と思われたくなかったんです。

川人: ストリーミングの性質を考えると、128kbpsのほうが合っているのではとも考えたのですが、こだわって320kbpsにしました。いずれ日本進出してくる海外サービスに負けたくない、という意地もあって(笑)。