<2/18 DAY2>日本武道館

『908 FESTIVAL 2021+1』の2日目は、久々の日本武道館に帰還する形で開催を迎えた。

グレーとブラックのモザイク模様が印象的なスーツを纏うKREVAは、「震えるなあ。いろんなことがあったし、いろんなことがあるからな」と告げて、思いを噛み締めるように「Finally」からパフォーマンスを切り出す。

セットリストは基本的に前日と同じだが、次第に高速回転し、生々しい感情の奔流と化すラップが強烈だ。

『908 FESTIVAL 2021+1』2/18 DAY2 日本武道館より 撮影:田中聖太郎

「武道館、マイ・スウィート・ホーム!」と呼びかけながら「In the House」を放ち、押韻とメッセージが渾然一体となった楽曲を次々と放つ。

花火や紙吹雪といった盛りだくさんの特効が華やかさを増幅させる一方、オーディエンスの声なき拍手喝采に対しては笑顔で「泣かそうとしてるの?」と応え、「今日は声を出せないかもしれないけど、その拍手が力になりますので」と告げるのだった。

またこの日は「よ ゆ う」へと向かうとき、最終日に出演を控えた三浦大知からライブ中に電話がかかってくる、という小芝居も披露される。

「みんなの前でやると、音楽の力を信じられる。「人生」が終わった後の拍手、沁みたなあ。後ろを振り返ると、かっこいいバンドがいるしね」と、何度でも『908 FES』開催の喜びを溢れ出させるのだが、より良いライブ環境を取り戻す未来を見据えながら披露された「All Right」〜「C’mon Let’s Go」〜「今夜はブギーバック」というメドレーは、この日も滑らかに楽曲のキーを上方向シフトさせるバンド演奏によって、まさに階段を上るように、状況が少しずつ変化してゆく過程を音楽的に表現していた。

さて、KREVAがステージから離れる僅かな時間に、バンドがスロウなBPMで奏で始めるのは、KICK THE CAN CREW「千%」のイントロだ。

演奏がひときわ力強く鳴り響くと、それぞれに色と柄はお揃いだが形状の異なる衣装で、KICK THE CAN CREWが躍り出てマイクリレーを繰り広げる。これこそ、天下無双のキャラ立ち3本マイクである。

『908 FESTIVAL 2021+1』2/18 DAY2 日本武道館より 撮影:田中聖太郎

LITTLE曰く、メジャーデビューアルバム『VITALIZER』リリースから20年と4日を数えるこの日、3人は変わらず“スーパーオリジナル”なコンビネーションと存在感を見せつけるのだった。

「sayonara sayonara」の湿り気を帯びた情緒深さや、 わちゃわちゃと相変わらず楽しそうな「地球ブルース〜337〜」、さらに「手を消毒して《握手交わす》!」の「マルシェ」と、ライブ定番曲の披露はもちろん嬉しいのだけれど、原曲のテイストを大切にしながら生演奏で再現してしまうKREBandの力量にも舌を巻く思いだ。

3人がステージに腰掛け、光と映像の幻想的な光景の中で披露される「ユートピア」の後、LITTLEはちょうどこの日、還暦を越えて勤め続けていたお母さんが長年の仕事納めを迎えたということで、ステージ上から「おつかれさまでした!!」と言葉を投げかける。オーディエンスは、温かな拍手を贈っていた。

『908 FESTIVAL 2021+1』2/18 DAY2 日本武道館より 撮影:田中聖太郎

一方、MCUはファミコン世代だけが爆笑するネタを飛ばしまくる。そして、先頃デジタルシングルとミュージックビデオが届けられたばかりの「Boots」については、そもそも「イツナロウバ」の冬版をイメージして生み出した楽曲であることを明かし、「まだ何も終わっちゃいないぜ」と「イツナロウバ」のフックを歌って「Boots」に繋ぐ。新曲なのに、グッと親密な距離感で伝うナンバーだ。キラキラとした曲調の中から、KTCCの進化し続ける表現力が伝わる。

「アンバランス」で一面のハンドウェーブを巻き起こすと、「今日は武道館を“住所”にしようぜ」とそれぞれの愛情をだだ漏れにし、KREVAはプリセットの岡村靖幸パートに歌声を重ねるのだった。3月30日リリースのニューアルバム『THE CAN』も楽しみだ。

『908 FESTIVAL 2021+1』2/18 DAY2 日本武道館より 撮影:田中聖太郎