久本雅美と藤原紀香がW主演を務める『毒薬と老嬢』が、東京・新橋演舞場で3月16日に開幕。これに先立ち、初日前会見とゲネプロが行われた。
1941年に米ブロードウェイで初演されたジョセフ・ケッセルリングの戯曲を、錦織一清の演出で繰り広げる本作。ニューヨーク・ブルックリンの閑静な住宅街に暮らす老姉妹のアビー(久本)とマーサ(藤原)は、自家製の“ぼけ酒”を身寄りのない年配者に振る舞うなど街で評判の慈善家だった。しかし、このふたりはある秘密を抱えていて──。なお本作は2020年3・4月に上演予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止になった経緯がある。
仕切り直して再出発する想いを、久本は「キャスト・スタッフ、何とか元気で初日を迎えられました。一致団結して最後まで乗り切りたい」とコメント。藤原も「懸命にみんなで積み上げてきた『毒薬と老嬢』を一人でも多くの人に届けたい。こんな時代だからこそ、クスッと笑える楽しい作品を」と続く。
話題は全編“関西弁”で展開されるという会話劇へ。大阪府出身の久本、兵庫県出身の藤原はもともと“使い手”だが、ブルックリンが舞台のブラックコメディを郷土の言葉で立ち上げた実感を問われると、久本は「関西弁では“どういう言い回しになるの?”と相談したね」と稽古中のエピソードを披露する。藤原は「日ごろ喋っている標準語が出ないようにしないと」と注意するものの、会見中のイントネーションはすっかり関西弁だ。
両者揃って挙げる見どころは、ずばり「会話劇の応酬」に。特に久本は海外の人名が次々と登場することに苦戦した様子を「テディ(渋谷天笑)だのモーティーマー(納谷健 / 劇団Patch)だのジョナサン(室たつき)だの……誰?」と再現して会場を湧かせる。藤原は「セリフにも韻を踏んでいるところがたくさん散りばめられているんですよ。役者の集中力を要する作品ですが、そのぶんお客さんは楽しめるのでは」と笑顔を見せた。
ゲネプロは全編にわたって、アビー&マーサの邸宅を訪れる各キャラクターが老姉妹のマイペースぶりに翻弄される様子をおもしろおかしく描くコメディが展開された。応接間のチェストに死体を隠しても「私たちのお客さま」で押し切るブラックさを、久本と藤原は和やかな笑顔と陽気な関西弁で表現する。ラストには安楽死や高齢化社会への風刺がにじむものの、どこかほくそ笑んでしまう後味だ。
東京公演は3月20日(水)まで。その後、26日(土)・27日(日)に愛知・御園座、4月2日(土)に福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、9日(土)・10日(日)に北海道・道新ホール、16日(土)~24日(日)に大阪・大阪松竹座と巡演する。チケット販売中。
取材・文:岡山朋代