ダイソンの「Purifier humidify+cool Formaldehyde 加湿空気清浄機 PH04 WG N」。ダイソンオンラインストアでの価格は10万3400円

【木村ヒデノリのTech Magic #097】 花粉の季節が到来した。筆者は数年前まではそこまでひどくなかった症状がここ数年悪化している。娘が気管支炎を患ったこともあり、今年は空気清浄機を導入することにした。というのも、今まで使っていたバルミューダの「Rain」を義姉に譲ってから悪化したように思えたからだ。 昨年は加湿器がなくても大丈夫なようだった湿度も今年は30%台まで落ちてしまっている。Rainが意外と活躍していたことに改めて気づいた格好だが、不満点があったのも事実。例えば、タンク内の水を短期間でも放っておくと異臭がし始めたり、フィルターが汚れやすく頻繁に新品と交換しなければならなかったり、といった具合だ。

この辺りも併せて解決できるような製品がないか探したところ見つけたのがダイソンの「Purifier humidify+cool Formaldehyde 加湿空気清浄機 PH04 WG N」(以下、PH04)だ。この製品は加湿するとともにホルムアルデヒドまで分解してくれる空気清浄機能を持ち合わせている。価格はRainの2倍とかなり高額だが、こういう製品をレビューするのが筆者の役割と言い聞かせて購入してみた。

バルミューダももちろん優秀、ただ気になる点が

誤解のないよう先に伝えておくが、バルミューダのRainはかなり優秀だ。特に空気を循環させるパワフルさと加湿性能はPH04より高いと感じだ。筆者は50平方メートル弱の狭小住宅に住んでいるので当然1台である程度の面積はまかなえるだろうと踏んでいたが、PH04を稼働させてしばらくしても隣接したキッチンなどの湿度があまり上がらない。Rainを使っていた時にはなかった現象だったので、改めてRainの加湿性能の高さを思い知らされた。

また、各部屋の湿度もRainの方が一定になっていた。対してPH04の結果は各部屋で5%弱差があるような状況。PH04のセンサーが敏感なのか各部屋のSwitchbotセンサーがアバウトなのかわからないが、50%の設定でやっても各部屋の湿度は40%台と上がらない。仕方なく70%で稼働させるとようやく50%台にまで上がった。こうしたことはRainを使っている際には起きなかったことなので、加湿性能や空気を循環させる機能はRainの方が高いのだろう。

このように加湿器としてはかなり優秀なRain。構造的には酵素プレフィルターも内蔵し、そこに含まれた水分を蒸発させることで加湿する気化式なので一定の空気清浄効果もある。吸水もタンクを持ち運ぶのではなく壺のようになった本体に上から直接吸水と斬新だ。

ただ、気になる点もあった。特に懸念事項だったのは冒頭に書いた水の臭いだ。毎日稼働させておけばそこまで気にならないが、春先など一旦止めたりすることのあるタイミングでは吹き出す風が臭うことも。また、水量がディスプレイでしか確認できないのも意外と不便。50%が保たれていると稼働音も小さいため、アラームに気づかないといつの間にか止まっている、といったこともあった。これが臭いの原因になることもあるため、水量が遠目から見て確認できないのは実用面でマイナスに感じた。

水が常に清潔! UV-Cで殺菌しながら給水するシステムがすごい

一方、PH04では上記の最大の懸念点を解決している。給水ノズルにUV-Cライトを照射し、殺菌しながら給水する構造だ。波長も275nmと細菌やウイルスのRNAの破壊に最も適した長さを採用。妻いわく「外よりも気持ちの良い風」を常に供給してくれるのには舌を巻いた。

タンクには水が5L入り、最大で36時間連続運転ができる。カタログスペックに偽りはなく、体感的にも1度の給水でかなり長く運転できる印象だ。水が少なくなった際のアラートも前面のモニターに表示されるし、タンクも透明で視認しやすいのでRainのように注水を忘れてしまうこともなかった。加湿器を利用していて一番気になるのは風の臭いなので、これが完璧に解決されているだけでも十分投資をする価値があるだろう。

フィルター自動洗浄機能搭載! 手入れがボタン一つで済むのもすごい

Rainでは毎年1回交換を推奨していたフィルター類だが、ダイソンの場合フィルターを洗って再利用することができる。空気清浄用のフィルターは交換が必要なものの、湿って気化を繰り返す加湿フィルターが洗えるのは画期的だ。さらにその洗浄が本体内で済むというのだから驚かされる。洗浄を推奨するアラートが出たら本体タンク内にクエン酸とフィルターを投入。洗浄ボタンを押すとクエン酸液が循環し、タンク内のノズルとフィルターを同時に綺麗にしてくれる。この機能は他社製品で見たことがないが、実用を考えた良いアイデアだ。

吹き出し方式が変えられるのがすごい、ディフューズモードの利点

PH04では吹き出し方式も改良されている。今までは本体が左右に動いていたが、PH04は左右の吹き出し口のみが動く構造。それぞれが同じ向きだけでなく独立した動きをすることで気流を起こし、部屋内の空気を効率よく循環させることができる。

また、Rainでは上向き一方向だった風向がPH04では変えられるのも良い。冬場は夜間冷え込むため、ずっと空気を循環させていると寒く感じることがある。Rainを使っていたときもそのパワフルさから肌寒さを感じることがあった。PH04では前側からは効率よく循環する風を出せるが、夜間など風を感じたくない場合は背面から排出する方式に変えることができる。これをアプリでスケジューリングできるのが非常に便利だ。筆者は夜9時までは循環効率を優先し、寝る前にディフューズモードに切り替わる設定にしている。

コスパはノーマルモデルに軍配、最上位モデルでなくても良い

筆者が選んだのは最上位のホルムアルデヒドまで分解できるモデルだが、正直あまり効果を実感できていないのでノーマルモデルで十分かもしれない。シックハウスなどの症状があって気になる方には永続的に分解できる構造なのでおすすめだが、1万円近く差があるので、通常ならノーマルモデルが良いだろう。

1点だけ気になるのはセンサーの正確さだ。筆者宅では2日に1度くらい特に何もしていないのに空気が汚れている数値になり、しばらく戻らないことがあった。センサーが敏感すぎるのか、もしくは気づいていないうちに汚れているのかは今後もう少し検証してみたいと思う。

PH04の導入だけが要因だとは考えていないが、娘の咳がおさまったのは事実だ。高額なため、戸建住まいなど部屋数が多い読者には向いていないかもしれないが、広めのマンションリビングなどには非常に良い製品だろう。通常の加湿器のように冬場利用するだけでなく、夏場は冷房効率を高めるサーキュレーターとして機能するのも良い。加湿は花粉を重くして落ちやすくする意味から有効だということなので、この時期に導入検討してみてはいかがだろうか。(ROSETTA・木村ヒデノリ)

■Profile

木村ヒデノリ

ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

【新きむら家】

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