4月4日(月)に初開催される「MBSらくごスペシャル 春蝶・吉弥と一之輔 三人噺」。上方落語からは桂春蝶、桂吉弥が、江戸落語からは春風亭一之輔が登場する。演目も発表され、桂春蝶は『浜野矩随(はまののりゆき)』。元は講談噺で、名工と呼ばれた父を持つ息子と、息子を思う母の姿を描いた人情噺だ。桂吉弥は京都が舞台の『愛宕山』と、にぎやかな上方らしい噺を口演。そして一之輔は滑稽噺の『青菜』を、江戸前の情緒たっぷりに披露する。

「春蝶・吉弥と一之輔 三人噺」 チケット情報

開催を前に取材会を行った3人。それぞれネタを選んだ理由について尋ねると、春蝶は次のように話した。「僕は2011年から東京を拠点にしていて、今は東京のネタを上方落語の自分の立場でリライトするというようなことをやっています。『浜野矩随』もそのひとつで、“東京の名作を大阪の噺家がやるならこういう感じ”というふうにやっています」。1993年に亡くなった春蝶の実父は、名人と呼ばれた二代目春蝶。二世という同じ境遇に自身を重ねた。「前から自分の立場と重ねてやってみたいという思いがありました。二世としていろいろ言われたこともあるから…」。また、実母がこの3月3日に急逝したことも明かし、「この日だけは、お客様と母にささげたい」と胸の内を語った。

吉弥は一之輔との共演も意識して、三味線や太鼓がBGMのように入る上方らしい演目を選んだというが、そこには師匠への思いもあった。「『愛宕山』は50歳で亡くなったうちの師匠の吉朝がやっていました。僕は今51歳になって、年だけは師匠を越えたので、それを機に師匠がやっていた素敵な『愛宕山』をやりたいなという気もありました」。一之輔は「そもそも事前にネタを発表してやるのはすごく嫌いなんですよ。やりたくなくなっちゃうんですよね」とざっくばらん。だが「当日決定する出番順も意識した」と、細やかな配慮も欠かさない。「すごく単純な滑稽噺なので、最初の導入としてもいいし、休憩を控えた2番目でドン!と笑ってもらうのもいいし、最後、ぐったりするほど笑っていただくのもちょうどいい。どのポジションでも僕がやる『青菜』は喜んでいただけるかなというセレクトです」と自信をのぞかせる。この噺は落語協会会長の柳亭市馬から習ったという。「習って、市馬師匠の前でやったら『跡形もないな』って言われて。跡形のない『青菜』、スムージーみたいになっていると思います」と“飲みやすさ”もアピールした。

「舞台の上では遠慮しても仕方ない」と意欲を燃やす3人。初めての競演だけに、東西落語界に新たな潮流が生まれるのではと期待も募る。その瞬間をぜひ見届けてほしい。

取材・文:岩本