こんにちは、東京小猫商会メンバー、
そしてクリアファイル鑑賞評論家のウイノです。

今回は、奈良国立博物館で開催された
第63回正倉院展でみつけた、そして
買ってきた文房具について書いてみます。

正倉院展、ご存知の方がほとんどだと思いますので
説明は省きます。それ、何?と思われた方は、
このあたりをご参照ください。

今回、久しぶりに正倉院展に足を運んだのは、
目玉出陳の中にどうしても実物を見たいものが
あったからなのですが、こちらについては後述しましょう。
それよりも、このコラムにぴったりな宝物が展示
されていましたのでまずはそちらのお話を。

その宝物とは、紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)。
これは、象牙に鮮やかな彩色をし、花鳥模様の
彫刻を施した装飾的な定規です。
文房具が文房四宝と言われていた起源を想わせる
素晴らしい御物です。
思いがけないアイテムとの再会に私はうれしくなりました。
なぜなら、私はこの撥鏤(ばちる)ファンで、ほんの数年前に
紅牙撥鏤尺と色違いの、緑牙撥鏤尺が揃って出陳、
というので、いそいそ正倉院展に出掛けたことが
あるからです…

と、ここで「待てよ」と思いました。
なぜなら正倉院展の御物は
「原則として10年に1度しかお目見えしない」
ローテーションで部分公開されているはず。
なのに私が以前撥鏤を見たのは5年ほど前。
これは、特例中の特例なのか?
そして思い当たることがひとつ浮かびました。
これです。

   

 













緑牙撥鏤尺をイメージしたお土産物の定規
これはお土産用の撥鏤尺をイメージしたものさし:
プラスチック製です。

   

 








全体像です。
この定規、特別展のおみやげアイテムとしては
デザイン、コンセプトともに素晴らしい出来栄えで、
当時も、私は感動して購入したものでした。

   

 











定規の文字面

そう、それと同じ商品が今回も会場で販売されていた、
もしやもしや、在庫をはかすために特例として
紅牙撥鏤尺は十年待たずして再登場した、
なんてことが、まさか?と疑念を持った訳です。

早速、受付に問い合わせました。
だって、これが本当なら、優良文房具が世の中に
受け入れられず、特例を実施させた、という
これまたじっくり考えてみたい問題だと思ったからです。

受付の方が丁寧に学芸員まで問い合わせてくださった
ことによると「前回の紅牙撥鏤尺と今回のものはよく
似ていますが別のものです」。

安心したような、がっかりしたような…というより、
疑ってごめんなさい…

それにしても、こんな宝物を複数持っていたとは。
聖武天皇の権勢、おそるべしです。
ちなみに、前回の時は、別のシンプルな象牙定規も
出陳されていました。
もしかしたら、計測ツールがお好きだったのかもしれません。