いよいよ登場!リアルな重機の世界

日立建機・小俣さんより、まず熱く語られたのが「油圧」が持つパワー。

日立建機は、1965年に日本初の国産油圧ショベル「UH03」を製造し、現在の世界トップレベルの油圧システムへ進化を遂げてきた。

「油圧」は、密閉した流体を使うことで、小さな力を入れるだけで、より大きな力へと変換することができる仕組みだが、その力は数倍の力にもなる。

油圧の力を組み合わせ、より大きな力へと変換することもでき、技術力の進歩によって精密なコントロールが可能になることで、巨大な力をより繊細に扱うことができるようになったのだ。

ちなみに建設機械が水圧でなく、油圧を採用するのは、作業する現場が過酷な温度下であるからだという(水は0℃では凝固、100℃で蒸発してしまう)。

そして、そんな日立建機さんによって、生み出された建設機械の中には、非常にユニークなコンセプトのものがある。

例として挙げられたのが双腕仕様機「アスタコ(ASTACO)」だ。人型ロボットのように、2本の腕を駆使して作業をすることができる。名前はスペイン語でザリガニ(=ASTACO「Advanced System with Twin Arm for Complex Operation」)を意味する。

油圧の力が示すように、2本の腕は(アタッチメントで変わるが)軽く20トン程度の握力を持つこともできる。

3本の腕だと、人間が頭で考えて操作するには難易度が高すぎる。そのために2本の腕という形に落ち着いた。

操作はレバーを前に出したり後ろにしたりするだけの、シンプルな形にしているという。操作に慣れていることもあるが、小俣さんは2時間程度で使いこなせるようになったとか。

アスタコは東日本大震災の現場においても、使用されている。こうした新技術を用いた建設機械は、すでにリアルの世界で活躍中であるといってよい。

近未来の建設機械を考えるとき、その「小型化」は視点としてはずせない。例えばパトレイバーには警備用ロボットが登場する。

長期間のプロジェクトになることが多い建設の世界。人為的な犯罪や妨害などから現場を守ることはかなり現実的な課題なのだという。

また工事現場が汚れていると事故の発生率が高くなることから、清掃用ロボットなども多いに活躍するだろうとのこと。

都市土木は大きな建物がすでに建てられている先進国で発展するという。新興国などでは大きな建物を巨大な機械を使って築くことが主眼となるが、例えば東京などの都市ではそうした機械よりも小型の機械を使って建物の保全を行うことになる。

今後は「着る重機」に着目?

現在は、人体に装着するパワードスーツも開発されているが、ああした機械もいずれ一般的になる可能性もあるとか。工事現場はかがむ作業も多く、高齢化も進んでいることから、作業員の身体を守る意味でも、開発ニーズは高い。

パワードスーツにおいても油圧技術を用いれば、通常の数倍の力を少ない力で出すこともできる。

矢部さんからは「パワーショベルが中古市場に出回っているのもあってか、比較的郊外では一般の人たちも使っているように思える」という意見が。

今は、建設機械として特別な世界で活躍している機械や技術も、いずれ一般の家庭で当然のように使われる時代が来るかもしれない。しかも、それはハードだけでなく、ソフトの世界も同時に活用される可能性が高いのだ。

図は、日立建機HPにもある、自律型建設機械向けのシステムプラットフォームだ。小俣さんからは、こうした機械を「自動化」にもっていくことが目下の注力ポイントだという。

例えば、機械を扱う人間が経験則で判断をするより、認知判断をコンピューターにやらせる、といった構想だ。そのための知見はシステムプラットフォームにより集約され、活用される。

デジタル田園都市構想のように、東京だけでなく、地方においても今後新しい形での都市化が進む。

そこに登場するのは、今までよりもさらに形をかえた建設機械たちである可能性が高いだろう。パトレイバーで描かれたレイバーや新未来の姿は、現実ではもっと驚くべき進化を遂げて我々の目の前に姿を現すかもしれない。

パトレイバーから広がるニッチな世界の発見と、自分たちの生活への隠れた影響・未来構想までつなげることで、「新しい知識」と「新しい生活への高揚感」が得られた。

(ライター名 Ryoz)