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  • パトレイバーで解体作業をしているレイバーを紹介
  • 作中ではかなり乱暴な壊し方をしているそうだが、これは時代背景もある
  • 「極地用」レイバーの面々
  • 都市土木の建設機械とは異なり、巨大化し特殊装備を持つようになるのが「極地用」の特徴
  • 実はヨーロッパでは実用化されている機械があるという

アニメと現実の企業によるイノベーション

近未来ポリスアクション『機動警察パトレイバー』は、1988年より作品化されたHEAD GEAR原作のOVA・漫画・アニメ・映画などのメディアミックス作品のこと。

作品内に登場する汎用人間型作業機械「レイバー」は、当時に想定された近未来(21世紀初頭)の東京を舞台に現実の建設機械と同様に普及している。そして主人公が所属する警視庁「特車二課」も警察レイバーを駆使して、レイバー犯罪に立ち向かっていくストーリーとなっている。

「パトレイバー塾」は、作品の中で描かれる都市・AI領域・ロボット工学・機械工学・警察機構などのあらゆる要素を、アカデミックに考察するセミナー。年四回を予定しており今回は第三回目となる。

WEBセミナー<アニメ × 都市論 【パトレイバー塾】 第3回「正しいレイバーの使い方」>は、パトレイバーに登場する作業用レイバー達やその世界感を絡めながら、日本の社会環境のあり方をアカデミックに考察していこうという面白い試みだ。

<出演者>
廣瀬通孝さん(東京大学名誉教授)
小俣貴之さん(日立建機株式会社 ブランド・コミュニケーション本部 広報・IR部担当部長)
小林あずささん(女優、アナウンサー)
矢部俊男さん(森ビル 都市開発本部 計画企画部 メディア企画部)

小俣さんと小林さんは『機動警察パトレイバー』の主人公たちが所属する “特車二課“のコスプレで登場した。

第3回のゲストには、現実でも建設機械を製造している日立建機株式会社の小俣さんが登壇。高校時代に『機動警察パトレイバー』のリアルな世界観を知り、「特殊な建設機械を設計したい」と思ったそう。

作品世界のレイバーシーンを見ながらも、リアルな建設機械の世界を解説していく企画となった。

冒頭から壮大!「レイバーの世界からの未来構想」

内閣府のHPでも公開している「デジタル田園都市構想」の資料を見ながらのおはなし。なかなかわかりにくいテーマであるそうで、「ついてこられなくても気にしないで下さい」とのことだったが、お話を聞くとなかなか興味深い内容。

現在は東京など、一部の都市一極集中化な日本だが、まさに今、地方のデジタル都市化を目指して、きわめてリアルな国家構想が推進中だという。

かつてはビルの上から下までを「電線」で通すことがデジタル都市化の原点だったそうだが、スマートフォンの普及にみられるように、通信性がどんどん向上していく昨今、デジタル環境による地方都市とバーチャルな世界の時代はまさにこれから「くる!」話なのである。

第2回の時にはパトレイバーの部隊を多摩エリアに想定した世界感が語られていたが、こうしたリアル×デジタルの未来都市の世界はすぐ先まで近づいているのかもしれない。新未来都市でレイバーのような存在が活躍する世界は果たしてあるのだろうか?

■レイバーと重機登場!

トークはいよいよ日立建機の小俣さんを巻き込み、現実の建設機械の世界に足を踏み入れていく。

パトレイバーで解体作業をしているレイバーを紹介。作中ではかなり乱暴な壊し方をしているそうだが、これは時代背景もあるという。

80年代は“ものを分別”という観点は薄かったが、現代ではきちんと分類して廃棄する必要がある。そのためさまざまな重機が役割分担して丁寧に壊しているのだ。

ここで語られるのは建設機械のパワー。小さなパワーショベルでも強力な力を持っており、普通の自動車程度なら屋根をさっくり取り除くこともカンタンとのこと。作業していると「“強い身体”を手に入れた!」という感覚が得られてしまうのだとか。

コメントでも「作中で一般人がレイバーを使って事件を起こしちゃう心理がわかる」という意見が寄せられていた。

ここで登場したのは「極地用」レイバーの面々。ダムやトンネルを掘る、寒冷地、海など特殊な環境で活躍するレイバー達である。日立建機でも自社製品は南極での使用例があるそうだ。都市土木の建設機械とは異なり、巨大化し特殊装備を持つようになるのが「極地用」の特徴。

実はヨーロッパでは実用化されている機械があるという。特殊建機の世界はとても奥が深く、日立建機の小俣さんは「他社の製品を見るのも好きですね。どうしてこんな姿をしているんだろう、どんな設計思想なのだろう?みたいな……」とおっしゃっていた。

ほかのロボット作品やリアル建設機械も交えての大きさ比較も。最も大きいのはロボットアニメ「ガンダム」のガンダムだ。

日立建機さんといえば、横浜に「動くガンダム」を建設したのが、元日立建機の石井啓範氏。小俣さんも「現実的な大きさとして慣性の法則がある以上、ガンダムはアニメのように動かすのは難しい」という話を聞いているとか。

こうしてみると、パトレイバー「イングラム」の大きさは非常にリアル感があるのだという。現実的には道路交通法というものがあるが、もしかしたらそのまま現場まで運んでいけるかも、という大きさなのである。

例えばガンダムであれば、バラバラにして現場で組み立てなおさないといけない。先導車などで運ぶ形なら(新幹線が夜中に輸送されているように)運ぶことができるのでは、という話も出てきた。

ジオラマに配置されたイングラムとグリフォン。電車や車と比較すると、これでもかなり大きいのがわかる。