劇作家兼演出家のG2が、新作ミュージカル『スワンキング』を書き下ろし。自ら演出も手がける。そこでG2に、本作に寄せる想いを語ってもらった。
芸術に傾倒するあまり浪費を繰り返し、“狂王”と呼ばれたバイエルンの国王ルートヴィヒ二世と、“天才”と言われつつ、借金と女性問題に苦しんだ作曲家リヒャルト・ワーグナー。G2はワーグナーの妻に関して書かれた本との出会いから、彼らを中心に据えたミュージカルの創作を思いついたと言う。「その本がまんまお芝居にしたいくらい面白くて、もともと興味のあったふたりの関係に、コージマというワーグナーの妻を絡ませた芝居を作りたい、という直感が働きました。なにより惹かれたのが、僕にも似たふたりの男のダメさ加減(笑)。でも夢を追い求める彼らのピュアさというのは、そのダメなところを補って余りあるのではないかと思ったんです」
核となるふたりを描く上で、G2が特にこだわったのが…。「このふたりって仲が良かったのは最初だけで、後はずっと喧嘩しているんですよね。そんな男ふたりが憎んだり、愛したりする姿勢。特に僕は、彼らが格闘している姿がすごく好きで。そういった部分を抽出して描きたいと思いました」
A.B.C-Zの橋本良亮がルートヴィヒを、別所哲也がワーグナーを演じる。「橋本くんとは去年、全公演中止になってしまった音楽劇でご一緒し、その時からルートヴィヒにいいんじゃないかと思っていました。感受性が強過ぎる、あまりオープンじゃない王様の役がとても合いそうだなと。別所さんのワーグナーは、これハマり役だと思いますね。先日一曲だけ歌ってもらう機会がありましたが、いきなりイメージ通りで。憎たらしい、嫌な感じの男をうまく演じてもらえそうです」
音楽もすべて書き下ろし。三谷幸喜作品でもおなじみの荻野清子が手がける。「僕の演出意図を汲んでもらい、演出代行なくらいの気持ちで曲を作ってもらわないと出来ない芝居なので、荻野さんに参加してもらえたのは本当に嬉しいです。自分でもこれは理不尽だなと思ったオーダーが、芝居の流れ的に、『最初は楽しくて最後が絶望的というのを一曲の中でやって欲しい』というもの。言うは易し、ですよね(笑)。でもそれが見事に出来上がってきて。今回の僕の目標が、『どこから輸入したの?』と言われる作品に必ずすること。ミュージカルが輸入産業になってしまっている、今の日本の演劇界を変えたい。そのために一石を投じるような作品にしたいなと思います」
取材・文:野上瑠美子