
11月の招待制での国内販売開始以来、品切れが続いているスマートスピーカー「Amazon Echo」。Amazonのクラウドベースの音声アシスタントサービス「Amazon Alexa」に対応し、ロボット掃除機の「ルンバ」、LED照明の「Philips Hue」など、さまざまな家電との連携が可能となっている。
ただ、米国では家電制御のデファクトスタンダードになりつつあるAlexaも、日本国内ではまだ対応製品が限られている。そこで、Alexaに対応していない従来の家電製品を「スマート化」するのに役立つのが、ネットワーク対応の学習リモコンだ。今回は、そうしたAlexa対応リモコンの中から、リンクジャパンの「eRemote mini」を使用してみた。
ネットワーク対応の学習リモコンで家電を操作
eRemote miniは、テレビや照明、エアコンなど、複数の家電の赤外線リモコン信号を学習し、スマートフォンアプリからそれらの家電を操作可能にする機器だ。この製品とEchoを連携させると、「ユーザーがEchoに操作を話しかける」→「EchoからeRemote miniに指示が伝わる」→「eRemote miniが赤外線リモコンで家電を操作する」といった具合で音声による操作が可能になる。
まずは、eRemote miniで自宅の家電を操作できるようにセットアップを行う。Alexaに対応したeRemote mini専用アプリの「eHome」をスマホにダウンロードし、学習したいリモコンをアプリ上に登録していく。なお、取扱説明書には、Alexaに対応していない旧版の「e-Control」というアプリをダウンロードするように書かれているので注意しよう。
一部のテレビなどはメーカー名を選ぶだけで対応するリモコン信号が登録されるが、それ以外の家電製品を操作したいときは、その製品の付属リモコン信号をeRemote miniに学習させる必要がある。
eRemote miniは、照明やオーディオ機器、扇風機など、赤外線リモコンで操作できる多くの製品に対応しているが、エアコンだけは学習が難しいケースが多い。エアコンのリモコンは温度、風量、風向など多数の情報をまとめて送信するため信号が長く、しかもリモコンの表示窓に出ている情報の状態によって同じボタン操作に対して信号の内容が変化するためだ。ただ、主要メーカーのエアコン信号はカバーされているようなので、業務用のエアコンなど特殊な機種を使うのでない限りそれほど問題はないだろう。
これで、スマホのeHomeアプリから家電のコントロールが可能になる。寒い日、帰宅前にエアコンを操作して部屋を暖めておけるだけでも便利だし、複数の操作を連続して実行することもできるので、赤外線信号が届く範囲なら照明をまとめてつけたり消したりできる。部屋が散らかっていてリモコンがすぐに取り出せないときも、スマホさえ見つかれば家電を操作できる点も良い。
「Alexa対応」への過度な期待は禁物
次にeRemote miniとAlexaを連携させるわけだが、実際にアプリを設定してみたところ、現状ではかなりトリッキーな設定をしないと、従来の家電のコントロールは難しいことがわかってきた。 eRemote miniとAlexaで利用できるスマートホームスキル「LinkJapan」は、今のところ照明のオン/オフのみに対応している。このため、テレビなど照明以外の家電を操作したい場合も、その機器を「照明」という扱いで登録する必要がある。例えばテレビのオン/オフを音声で操作したい場合、コントロールしたい家電タイプとして「照明」を選び、その照明に「テレビ」という名前を付けて、テレビリモコンの電源ボタン信号を学習させるという具合だ。
このような機器登録を済ませた後、スマホ上でEchoの設定を行うAlexaアプリを開き、「LinkJapan」スキルを有効にした後、Echoに向かって「アレクサ、デバイスを探して」と話しかけると、スマートホームデバイスとしてようやく「テレビ」が登録される。
あとは「アレクサ、テレビをつけて」「アレクサ、テレビを消して」の音声コマンドでテレビのオン/オフが可能になる。ただ、テレビのリモコンの電源ボタンは、電源をオンにするときもオフにするときも同じ信号が送信されるので、テレビの電源がオフのときに「テレビを消して」と言ってもオンになるし、その逆も同じだ。また、「音量を少し上げて」といった細かい操作はできない。
これだけだとあまり音声操作を行う価値はないようにも思えるが、Alexaでは複数の家電をグループとして登録し、グループ名に名前を付けることができる。例えば、照明とエアコンとテレビの電源オフ信号を学習して、「リビング」という名前を付けておく。「アレクサ、リビングを消して」と言うだけですべての電源が消えるので、布団の中に入ってからしばらくテレビを見て、眠くなったらアレクサに電源オフを指示して寝るといった使い方が可能だ。
実は、ラトックシステムの学習リモコン「RS-WFIREX3」を利用すると、テレビの音量変更や暖房の設定温度の調整など、Alexaを経由してより細かい操作できる。価格や大きさは同等で、実勢価格は7000円前後。
しかし、この製品にも弱点がある。呼びかける際に「アレクサ、家電リモコンで、テレビの音量を4上げて」「アレクサ、家電リモコンで、暖房を24℃にして」といったように、「家電リモコンで」という一言を挟む必要がある。これは、Alexaのスマートホームスキルで現状対応できない機能をカバーするため、スマートホームスキルではなく「家電リモコン」というカスタムスキルによって操作を実現しているせいだ。直接家電の名前で指示するのではなく、家電リモコンというスキルをまず呼び出し、そのスキルに操作内容を伝えるという2ステップが必要になっている。
今のところ、Alexa搭載スマートスピーカーで、音声で従来の家電を操作しようとすると、「Alexaの機能を使って限定された範囲で操作する」か、「独自機能を使って細かいコントロールを可能にする代わり、コマンド音声が煩雑になる」か、どちらかに甘んじる必要がある。「Alexa対応で家電の音声操作が可能!」という売り文句だけを見て学習リモコンに飛びつくと、人によっては大きく落胆をすることになりかねない。
ただ、学習リモコンは単体でも便利に使えるうえ、今後のスキルの開発次第では、よりユーザーフレンドリーな音声操作が行えるようになっていく可能性はある。過剰な期待は禁物だが、少し先の未来を見せてくれるアイテムとしては、Alexa搭載スマートスピーカーのスタンダードモデル「Amazon Echo」と学習リモコンの組み合わせは面白いものだといえるだろう。(BCN・日高 彰)