4.4mmバランスジャックに対応したAP80 PRO MAX
中国・Dongguan Hidizs Technology(Hidizs)が3月20日に一般販売を開始した、携帯オーディオプレーヤー(携帯オーディオ)「AP80 PRO MAX」が面白い。クラウドファンディングでいち早く入手し、しばらく使ってきたので、そのレビューをしてみたい。2025年10月、米・クラウドファンディングサイト、KickstarterでプロジェクトをスタートしたAP80 PRO MAXは、目標額5万香港ドル(約100万円)を開始3分で達成。わずか20日間と短いプロジェクト期間で、最終的には2301人、344万6526香港ドル(約7000万円)の支援を集め、達成率6893%を記録した。人気のほどがうかがえる製品だ。
Hidizsは、世界のシリコンバレー、深センのすぐ北、東莞に位置するオーディオメーカー。中でも同社を代表する製品がAP80シリーズだ。アルミ製の筐体に、小型ながら心地よいクリック感と高い耐久性を実現する、アルプスアルパイン製の回転式スイッチを採用。手にすっぽり収まる「全部入り」携帯オーディオとして、一定のユーザーを獲得してきた。2018年に初号機「AP80」を発売したのを皮切りに、19年の「AP80 PRO」、21年の「AP80 PRO-X」を経て、登場した最新作が、AP80 PRO MAXだ。
最大の特徴は、スタイルをほぼ正方形から縦長に変更し、筐体を大型化した点。これによって、画面が2.45インチから2.95インチに大きくなった。AP80 PROから採用されているバランス接続対応のイヤホンジャックも大型化。一部で折れやすいとの評価もある2.5mm用ジャックから、より剛性の高い4.4mm用ジャックに変更した。もちろん、3.5mmジャックも備え、普通のステレオイヤホンも使える。DACチップは、前作同様左右独立した2個の「ESS ES9219C」を搭載する贅沢設計だ。大型化したとはいえ、幅51mm、高さ83mm、厚さ16mm、重量81gと非常にコンパクト。小さなボディーに、これでもかと機能を詰め込んだ携帯オーディオだ。
CPUは、前作のIngenic X1000からX1600Eにパワーアップ。2.4GHzのWi-Fi ストリーミング再生や、DLNAやAirPlayにも対応した。また、「MQA 16X フルデコード」も可能。ハイレゾ音源の圧縮規格MQAで、オリジナルのスタジオマスター音源と同じクオリティーまで、ほぼ完全に復元できるようになった。出力レベルは、アンバランス出力が32Ωで70mW+70mW、バランス出力が32Ωで190mW+190mWとまずまず。BluetoothもVer5.1に対応。送信ではLDAC、aptX等、受信ではLDAC、AAC、SBCに対応する。また、送受信ともHiBy Musicが独自に開発した、最大192kHzのサンプリングレートのオーディオコーデック「UAT」にも新たに対応した。
このBluetoothが「双方向」というのがポイント。もちろん、ワイヤレスイヤホンに音を飛ばして楽める「送信機」として機能するのは当たり前。逆にスマートフォン(スマホ)などが飛ばしてきた音を受ける「受信機」としても機能する。つまり、スマホで再生させた音楽を、AP80 PRO MAXで受けて楽しめる機能もあるわけだ。この機能のメリットは、使い慣れた有線イヤホンでスマホの音を楽しめるという点だ。さらに面白いのはリモコン機能。スマホアプリのHiByLinkを使って実現する。音楽はポケットに入れたAP80 PRO MAXで再生し、直接つないだ有線イヤホンで聴くという場合に便利。ボリュームを変更したり再生する曲を変えたりする際に、本体ではなく、Blutooth接続したスマホから操作できる。外出時、スマホは手に持っているか、取り出しやすい場所にしまっていることが多いだろう。ポケットにある携帯オーディオを、手元のスマホで操作できるのはいい。
歴代のAP80シリーズはBluetoothが弱く、ちょっと距離が離れると音が途切れるトラブルが頻発していた。部屋の端に置いたBluetoothスピーカーにつなごうとしても、うまくいかないことも多かった。しかし、AP80 PRO MAXではその点は改善され、普通のスマホと同じく10m程度離れても接続を維持。普段使いでの問題はなくなった。接続性という点では、PCとUSBで有線接続することで、USB DACとして機能するのもいい。PCの音を高音質で再生する際にも活用できる。このあたりが「全部入り」と言われるゆえんだ。また一応、Wi-Fiによるストリーミング再生もできるが、対応するサービスが「TIDAL」と「Qobuz」だけに限られている。当初はストリーミングサイトを自由に選べるのではないかと期待していただけに、ここは残念ポイントだ。
肝心の音質は、全く申し分ない。ノイズ感はほとんどなく、とてもクリア。特にバランス接続の有線イヤホンでは本領発揮だ。さすがにクロストーク(左右の音が混ざる現象)は感じられず、バランス接続らしくパワフル。有線イヤホンは、無線接続に必要な処理を介さずに耳に音が届く。そもそもの音の良さも相まって、普段使っているワイヤレスイヤホンの音と比べると「目が覚めるような音の良さ」が実感できる。感覚的な音質の傾向は、ちょっと堅めでデジタル感が強め。とはいえ、MSEB(Mage Sound 8-Ball)、10バンド・グラフィックイコライザー、パラメトリック・イコライザーなど、いくつものイコライザーを内蔵。音質を好きな方法で自分好みに調整可能だ。4月現在、amazonでは税込み(以下同)3万6000円程度、aliexpressでは2万7000円前後で販売されている。いい音で音楽を楽しみたいなら、1つ手に入れてみてはいかがだろう。(BCN・道越一郎)







